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リリカルなのは二次小説中心。 魂の唄無印話完結。現在A'sの事後処理中。 異邦人A'sまで完結しました。
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────────interlude ... 10 minutes ago

 クロノ君はプレシアさんの所へ、私とユーノ君、そしてさっき合流したアルフさんは駆動炉へと2手に分かれた。
 大量の傀儡兵、それに対抗するにはどちらも人数が足りなすぎて。
 短い期間でもこの事件の間コンビを組んでいた私達は、それなりにコンビネーションが練れてきている。
 だから、並みの相手に遅れを取る事はない。
 それ自体には問題がないんだけど……


≪うざいですねえ、この有象無象共は≫
「くそっ、時間がないのにっ」
≪cakram bind≫
「ショット!」

 響くアルトの女声とユーノ君の声に、翡翠のリング状バインドが放たれていく。
 円を描くように飛んだリングは、その軌跡を邪魔するかのように存在した傀儡兵の頭や腕を切り落として行った。

 そう、常時ならば問題ない。
 この程度、私達なら時間をかければ危なげなく処理できるはずだ。
 更に言えば今回はユーノ君が攻撃手に回っているから、以前のコンビネーションよりも攻撃の数は増えてる。

「っ、数が多い!」

 だけど、アルフさんの言う通り敵の数が多すぎる。
 数の暴力云々ではなく、純粋に残り時間が少ない中、いかにこの邪魔者を避けて進めるかが焦点となっていて。
 今の所ベオウルフを速度重視のナックルフォームにしてるけど、そろそろ私は火力重視のバスターフォームに変えて、強引に道を作るべきなのかもしれない。

「なんとかしないとっ……」
≪wire bind≫

 言いながらユーノ君の手から広がるのは3本のワイヤーバインド。
 ミネルヴァが補助する事で使えるようになった彼だけの武器。
 正確に傀儡兵を捕捉した細い糸のようなそれは、絡め取った敵の身体をいとも簡単に両断した。

 やっぱりちょっとエグ過ぎると思うな、あれは……

「なのはっ!? ミネルヴァ、チャクラムを!」

 そんな余計な事を考えていたからか、ユーノ君の声で後ろから迫る傀儡兵にようやく気付く。
 驚くアルフさんをよそに、彼は私を助けようと術式を組み始め、

≪だがお断りです!≫
「ええっ!?」
≪ユーノ、今あなたがなのはさんを助けたとしたら、この先一生空気の読めない男、略してKY男と呼ばれる事になりますよ?
 友人としてそれはどうかと思いますので、止めさせていただきます≫
「ちょっ、どうしてそうなるのさっ!?」

 にゃはは、ミネルヴァの言い方は酷いけど……でも必要ないよ、ユーノ君。

 私は微かに笑みさえも湛え、確信を持って目を閉じる。

 絶対、大丈夫。

≪騎兵隊の……到着です。出番を奪うなんてできるはずがないでしょう≫
≪thunder rage≫

 だって私の上には、私でさえ感じ取れるようになったあの子の魔力がある!

≪get set≫
「サンダーレイジ!!」

 雷が目の前の傀儡兵を駆逐して行く。
 それを確認しながら私は顔を上げ、あの子の名前を呼んだ。

「フェイトちゃん!」
「フェイト!?」
「そうか、フェイトが……」

 ゆっくりと飛び降りてくるフェイトちゃん。
 少し気まずそうな顔をしていたけど、それでも嬉しくて笑みが零れる。

 でも、今の状況はゆっくりお話しする事も許してくれない。

「「っ!?」」

 ドォンという音がして、新たな傀儡兵が現れる。
 特徴的なのはその背中から両肩に付いている大型の2門の砲門。

「大型だ、バリアが強い」
「うん、それにあの背中の」

 注意を促してくれるフェイトちゃんに頷く。
 気付けばその砲門に魔力が集中して行っていて。
 それを避けようと互いに背を向けた瞬間、

「だけど、2人でなら」

 この1ヶ月で一番聞きたかった言葉を聞けた。
 戦場の真っ只中だと言うのに私は一瞬呆け、それから満面の笑みで頷く。

「うん!」

 大丈夫。
 2人でならきっと……なんだって出来るよ。

「行くよ、バルディッシュ」
≪get set≫
「こっちもだよ、ベオウルフ」
≪buster form, stand by ready≫

 だから合わせて! 左右方向から同時に!!

「サンダースマッシャー」
「ディバインバスター」
「「せーのっ!!」」

 桜色と金色が、互いを高め合いながら場を蹂躙した。

────────interlude out

 2枚ほど床を抜いた所で足場が揺れ始めた。
 どうやら次元震動が始まったらしい。

【エイミィ、状況は?】
【なのはちゃんとユーノ君、駆動炉に突入。
 フェイトちゃんとアルフは最下層へ。
 クロノ君が先行してます。大丈夫、行けるよ、きっと】
【おう、わかった】

 ひたすら魔力を込めて床を貫いて行く。

 くそっ、何層あるんだよ、ここはっ。
 っ!? 震動が……弱まった?

【プレシア・テスタロッサ、終わりです。次元震は私が抑えています。
 駆動炉ももうじき封印。あなたの元へはアラン君と執務官が向かっています】

 リン姉か!
 よし、これで時間が稼げた。
 あの馬鹿の所まであとわずか。

【忘れられし都アルハザード、そしてそこに眠る秘術は、存在するのかどうかも曖昧なただの伝説です】

 ああ、伝説さ。
 本当にくだらない、御伽噺。
 だけど、それに縋るしかなかった……縋りつく材料が見つかってしまった。

【っ、違うわ。アルハザードへの道は次元の狭間にある。
 時間と空間が砕かれた時、その狭間に滑落して行く輝き。
 道は……確かに、そこにある!】

 彼女とリン姉の問答を聞きながら床を抜く。

 シア……あんた、そこまで。

 怒りなんてさっき、部屋を飛び出た時に消えてしまっていた。
 今の俺が感じられるのは悲しみだけで。
 どう表現していいのか分からない感情が渦巻き始める。

 まるで作業のように拳を床に叩きつける。
 淡々と……機械のように。

 だけど、沸々と湧き上がってくるものがある。
 これはいったいなんなのか……分からない、分からないけど、大切な事のような気がする。

【随分と分の悪い賭けだわ。あなたはそこに行って何をするの?
 失った時間と、犯した過ちを取り戻すの?】
【そうよ。私は取り戻す……私とアリシアの、過去と未来を。
 ……取り戻すの、こんなはずじゃなかった、世界の全てを!!】

 拳を叩きつけて、落下。
 今回はすぐに足がつかず、俺は足元を見遣る。
 広い空間、どうやらようやく到着したらしい。
 俺が落ちると同時に水色の槍が壁を貫き、その穴からクロノが姿を現した。

「っ!?」
「世界はいつだって、こんなはずじゃない事ばっかりだよ!
 ずっと昔から、いつだって誰だって、そうなんだ!!」

 気付く────

 嗚呼、そうだなクロノ。
 その通りだよ。
 本当に、こんなはずじゃなかった事ばっかりだ!

 ────この怒りは理不尽な世界に対してのものなのだと。

 クロノの真っ直ぐな瞳を横目で確認して苦笑した。
 俺はいつから、こいつ等の目を真っ直ぐ見れなくなっていたのだろうか。

 いつだって、こんなはずじゃなかった事ばっかりだった。
 そんな事ずっと前から知ってたはずだろ、俺は。

「こんなはずじゃない現実から、逃げるか、それとも立ち向かうかは個人の自由だ」

 フェイト嬢とアルフが到着する。
 どうやら途中から俺が抜いてきた穴を通ってきたらしい。

「だけど、自分の勝手な悲しみに、無関係の人間まで巻き込んでいい権利は、どこの誰にもありはしない!!」

 それだけ言うとクロノは黙り、フェイト嬢達に道を譲るかのように引き下がった。
 恐らく、ここから先は踏み入ってはいけない領域だと理解しているのだろう。

 そんな事を考えていると、突然シアが咳き込み始める。
 べしゃりと言う音と共に床へ落ちたそれは、赤の筈なのに妙にどす黒かった。

 まずいっ、あいつの体はもうそんな所まで来ていたのか!?

「っ、母さん!」

 それに驚いたフェイト嬢が駆け寄ろうとし、

「何をしに来たの?」

 彼女の冷たい、静かな言葉に足を止めた。

「消えなさい……あなたに用はないわ……」

 悲しい、と思った。
 どうして彼女は俺にこれを託したのか。
 恨み言を言いたいわけじゃない。
 俺以外に適任がいなかったのもわかる。
 それでも俺は……ただ、悲しかった。
 思うのだ。
 彼女が俺にこれを託さなければ、あるいは。
 純粋に彼女らを思って咆える事も出来たろうに。

 彼女の言葉にフェイト嬢はそれでも強い意志をその瞳に映し、自らの母を見る。

 その瞳を見て気付いた。
 俺はこんなに諦めがいい人間だっただろうか、と。

「……あなたに、言いたい事があって来ました」
「っ」

 誰も口を開かない。
 それは本当に穏やかな凪のように、静かに、フェイト嬢の声が響く。

「私は……私はアリシア・テスタロッサじゃありません。
 あなたが作ったただの人形なのかもしれません。
 だけど……私は……フェイト・テスタロッサは……あなたに生み出してもらって、育ててもらった、あなたの娘です!」

 それが……答えか。

 万感の想いを籠めて、受け止めた。
 笑う。
 意図せず笑いが込上げてくる。

 よお、シア。
 あんたの娘は、あんたが思ってるより頑固者っぽいぜ。
 んでもって、俺は俺自身が思っていたよりも、子供なのかもしれねえな。

 俺にしか見えないその角度で、彼女の口角が上がり、次いで冷笑に切り替わる。

 本当に……本当に、悲しい親子だ。

「だからなに、今更あなたを娘と思えと言うの?」
「あなたが……それを望むなら。
 それを望むなら私は、世界中の誰からも、どんな出来事からもあなたを護る」

 一瞬、彼女の顔が歪む。

 ああ、なんて言ったっけ、こういうの。
 そうだ、メッセージの最初にあったな。
 ……ヤマアラシのジレンマ、だ。

「私があなたの娘だからじゃない……あなたが、私の母さんだから!」

 そうして娘は右手を自らの母に差し出した。
 対して母はその手を見て、複雑な感情をいくつも浮かべ、笑った。

「……くだらないわ」
「っ」

 彼女が自らの杖で床を突くと巨大魔方陣が現れる。
 終わりが、始まる。

「まずいっ」

 クロノの叫びを合図に俺は走り出した。

 母子の対話が終わったなら、今度は俺の番だっ!
 まだ、完全な終わりまでには少しばかりの猶予がある!

【艦長! 駄目です、庭園が崩れます! 戻ってください。
 この規模の崩壊なら、次元断層は起こりませんから!
 クロノ君達も脱出して。崩壊まで、もう時間がないの!!】

 エイミィの必死な声を聞きながらフェイト嬢の横をすり抜ける。
 
 悪いな、エイミィ。そりゃまだ聞けねえわ。

「了解した。フェイト・テスタロッサ……フェイト!」

 そのまま、クロノが呼びかけても呆然としたままのフェイト嬢とプレシア・テスタロッサの間に割り込んだ。
 シアの目が俺を向き、驚く。

「アラン……よね?」
「ああ、訳あってこんななりだ。我ながら生き汚くて困るな」
「……蘇生したわけではないのね」
「死んだ覚えはない」
「そう」

 彼女は酷く残念そうな顔で溜息をついた。

「俺は……俺は認めないぞ、シア!」
「まだ私をそう呼んでくれるのね……」
「思ってたよりも俺は子供みたいでな。
 理屈じゃ納得できても感情が納得なんかしちゃくれねえんだよ!」
「ふふっ、今更気付いたの? あなた、結構昔から大人びてたけど子供だったのよ」
「ついさっき気付いたさ。
 なあ、シア。まだ止まれるはずだろう? まだやれる事は──」
「私達の間の問答は、あの時終わったわ……」
「シア……」

 深い、深い葛藤を秘めた彼女の目を見て、何も言えなくなる。
 右手を差し出そうとして、止めた。
 子供の理屈では彼女を止められそうにもない。
 かといって、大人ならなおさら、だ。
 悔しさにそのまま右手を握りこみ、唇をかんで腕を下げた俺を、彼女は穏やかに暮らしていたかつてと同じ表情で見ていた。

 諦めたくないのに、認めたくないのに、どうにもならない事が世の中にはある。
 ちっぽけな自分を実感して泣き喚きたくなった。
 それでも、俺達はそんな感情を抱えながら生きて行くしかないのか。

「……これ以外の結末は……なかったのか?」
「そうね……私達の再会がもう少し早ければ、あるいは」
「すまない」

 頭を垂れる。

 悲しかった。
 哀しかった。
 涙が出そうだった。
 でも、泣けない、泣かない。
 だって俺は、結局間に合わなかったのだから。

「あれを、お願いするわ」
「わかった……必ず、届ける。それで、見守るよ」

 それがあんたの……最期の願いだと言うのなら。

 崩壊して行く庭園。
 崩れ落ちてくる天井は、細かい砂礫から大粒の瓦礫へと変化しつつある。

「私は向かう……アルハザードへ。
 そして全てを取り戻す、過去も未来も、たった1つの幸福も!」

 俺によって中断させられていた言葉を再開する彼女に、何も言わず目を伏せた。
 地面が割れ、彼女とアーシャのポッドが落ちて行くのを、誰にも見えぬよう敬礼して見送る。

 願わくば、彼女等の眠りが安らかならん事を。

「っぁ、母さんっ!」
「フェイト!?」

 シアが落ちて行くのに飛び寄ろうとしたフェイト嬢をアルフが止める。
 割れた地面の淵で、フェイト嬢はシアの消えた先をただ見つめていた。

 ……そろそろやばくなってきたか?

 天井の様子を確かめながらフェイト嬢の隣に立つ。
 声をかけようとした瞬間大きな崩落と共に足元が崩れ、アルフの乗っていた足場と、俺達が乗っていた足場が分断されて行く。
 俺はフェイト嬢が足場からずり落ちてしまわぬよう、しっかりと抱え込んだ。

「っ!?」
「大丈夫か?」

 腕の中の彼女の安否を問う。
 僅かに頷いた彼女に安堵して上を見上げると、

「フェイトちゃん! お兄ちゃん!」

 桃色の閃光と共に天井を貫きなのはが現れた。
 フライヤーフィンで飛んでいるなのはは、虚数空間の影響を受けないギリギリの所でその右手を伸ばしている。

「跳んで、こっちに!」

 その手を見てから戸惑うように虚数空間を見下ろしたフェイト嬢に気付き、そっと頭を撫でる。

「え、えっと……」
「それでも、君はもう、決めたんだろう?」

 その言葉に彼女ははっとし、1度目を瞑ってからしっかりと頷いた。
 なのはの方へ手を伸ばそうとしていたフェイト嬢が、ふと何かに気付いたかのように振り向く。

「あの……」
「ああ、俺か? 大丈夫だ。虚数空間は慣れてっからな」
≪何せ経験者ですから、この人も私も≫
「だから心配しないで跳んでいけ」
「……はい」

 今度はしっかりなのはの方を向いて、彼女は跳んだ。
 合わさる2人の手と手、俺はその様子を見ながら術式を組み上げて行く。

「……さてと、帰るか相棒」
≪キング、大丈夫ですか?≫
「俺は大丈夫さ。俺は、な」

 上空を仰ぐ。
 青空など見えずに、目に入るのは廃れた庭園の天井のみ。
 頬を伝う何かに、俺は気付かない振りをする。

「帰ろう」
≪...ja, my king≫




 心配げに俺を見る2人に微笑むと、俺はその場から跳んだ。
 

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内海 トーヤ
性別:
男性
自己紹介:
ヘタレ物書き兼元ニート。
仕事の合間にぼちぼち書いてます。

其は紡がれし魂の唄
(なのはオリ主介入再構成)
目次はこちら

魂の唄ショートショート
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遥か遠くあの星に乗せて
(なのは使い魔モノ)
目次はこちら

異邦人は黄昏に舞う
(なのは×はぴねす!+BLEACH多重クロス再構成)
目次はこちら

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