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リリカルなのは二次小説中心。 魂の唄無印話完結。現在A'sの事後処理中。 異邦人A'sまで完結しました。
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其は紡がれし魂の唄~外伝~
 舞台裏では in 原作前
  その2.モブキャラですが、何か?


「んっと……こうじゃなくて……こうか? 違うな……」

 また何かを始めたらしい。

 僕はそう思いながらも教室の後ろを見やる。
 机に座ったまま、紙とペンを持ってうんうん唸っているのは銀髪の少年。
 その背は回りにいるクラスメート達よりもずっと低い。
 何しろ彼はスキップにスキップを重ねて9歳にして最上学年にいるのだから。

「これをこうして……うがーーーっ、なんでできねえんだよっ!!」

 当然ながら年が離れてる事もあって非常に話しかけづらい。
 更に彼は月に何度かこう言う風に叫び始める事があるのだ。
 これさえなければもっと話しかけようとする人も増えると思うのだが。

 ……無理か。

 僕等の学校においてトラブルマスターの名前は有名だ。
 好き好んでトラブルに巻き込まれようなんて人間はそう多くない。
 普通ならば、だけど。

「ねえ、それなんの魔方陣?」
「……え?」

 でも今日はなけなしの勇気を振り絞って話しかけてみる。
 ただ単に、彼の書いていた魔法陣に対する興味が、彼に関する噂話よりも上回っただけの事。
 彼は心底意外なものを見たと言う目で僕を見ていた。
 一瞬呆けた彼は、それでも満面の笑みを浮かべて座れよと席を勧めてくれる。

「珍しいな、俺に話しかけてくるなんて」
「そう……だね。前から話してみたいとは思ってたんだけど、周りがアレだからちょっとやりづらくて」
「そうかあ」

 怒るでもなく悲しむでもなくただ事実を受け入れただけ。
 そんな雰囲気の台詞だった。
 それが少し寂しいなと思ったのは僕だけの秘密だ。

「やっぱり初めて見るよ、この魔方陣」
「そりゃまあそうだろうよ。
 ミッド式でもベルカ式でもねえし。言うなれば地球式だな」
「地球式?」
「第97管理外世界、そこの惑星の名前さ。
 俺のご先祖様がそこ出身なんでね、それにちなんだ力を扱う為の術式を考えてた」

 説明を受けると、どうやらご先祖様の使っていた霊能力と言う力を彼は使ってみたいらしい。
 魔法側に才能のあった彼は霊能力を扱う資質が殆どない。
 だけど、代々受け継がれてきた術式を腐らせてしまうのは勿体無いので、どうにかして扱えないかを試行錯誤していた所だとか。

「その霊力って言うのがないと使えないんだろう?
 なら君が使おうとするのは難しいんじゃないかな」
「そうなんだけどなあ……ああくそっ、勿体ねえよなあ、これだけの術式」

 がしがしと乱暴に頭を掻き毟る彼を見ながら、どうやらこの魔方陣を扱う所は見られそうもないと嘆息した。
 未知の術式だから興味があったのだけれども。

「その霊力を溜めておける媒介とかがあれば使えたかもしれないのにね」

 だから、それは単純な思い付きだったのだ。
 僕はただ、思った事を言っただけ。

「は……? ちょっとそれ詳しく教えてくれ!!」
「え!? いや、だって、溜めておけるものがあれば力の円環式を用いて、循環させる事で術式に通しても大丈夫になるって……」
「それだああああああああああああっ!!!」

 急に叫んだ彼は、猛烈な勢いで紙に書き込みを始めて。
 僕はと言えば完全に置いてけぼりを喰らって、彼が楽しそうに魔方陣を書いていくのを見ているしかなかった。
 そうしている内にチャイムが鳴り、僕は後ろ髪を引かれながらも席に戻る。
 彼は、授業中もそれを書き続けて、結局先生に怒られていた。

 あの後、彼は何度か僕に術式の作成進度を教えてくれていたのだけれども、管理局員だった僕の親が殉職した事で地方に住む叔父さん達の所へ転校を余儀なくされた。
 彼は完成したら見せてやりたかったのにと残念がってくれて、友達の少ない僕はそれが凄く嬉しかったのを覚えている。




 あれから、もう10年が経つ。
 あの頃とは違って身体も大きくなって、僕は教壇から窓の外、空を見上げる。
 ずり落ちたメガネを上げて、彼の目と同じ色に僕は目を細めた。

「どうしてるかなあ、アラン君は」

 あの頃と同じように突っ走っているのだろうか。
 教室の後ろまで歩いて、あの時彼がかじりついていた机を触る。
 目を閉じれば、あの騒々しい友人の顔が鮮明に思い出せた。

「やっべー、忘れ物! あれ? 先生どうかしたんですか?」
「うん? ああ、ちょっと昔の事を思い出してただけだよ」

 そう言って、アラン君の机だった机を現在使っている生徒に場所を明け渡す。
 彼は手早く忘れ物を取ると、さようならと言って去っていった。
 少し似ているなと思い、僕は苦笑を漏らして。

「僕は元気だよ。君も元気でやってるかい?」

 呟きは誰の耳に入るでもなく、高い空に消えた。
 

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内海 トーヤ
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男性
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ヘタレ物書き兼元ニート。
仕事の合間にぼちぼち書いてます。

其は紡がれし魂の唄
(なのはオリ主介入再構成)
目次はこちら

魂の唄ショートショート
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遥か遠くあの星に乗せて
(なのは使い魔モノ)
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異邦人は黄昏に舞う
(なのは×はぴねす!+BLEACH多重クロス再構成)
目次はこちら

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