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リリカルなのは二次小説中心。 魂の唄無印話完結。現在A'sの事後処理中。 異邦人A'sまで完結しました。
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 それは授業中に突然感じられた魔力の波動。

【なのは!】
【うん、感じたよ。
 多分昨日ユーノ君が私達が行く前に逃がしちゃったやつなの】
【俺は今からそいつを捕まえに行くから、放課後はユー坊と一緒に街中サーチしてろ】
【わかったの。気をつけてね、お兄ちゃん】
【ばーか。あんなもんにやられるわけないだろ。
 それより、怪我でもして帰ってきたら鍛錬増やすからな】
【うにゃ!? が、頑張るの】

 念話を切ってポケットに手を突っ込む。
 プライベート用を手探りでいじって電話をかけた。
 同時に逆ポケットの携帯がなり始める。
 視線で許可を取ると、俺は通話ボタンを押した。

「はい、ああ、俺だ」

 あたかも相手がいるかのように喋る。
 教師に目を合わせると仕方ないといった様相で頷いてくれたので、廊下に出る。
 5分程時間を潰してから教室に戻った。
 この時少し慌てたようにするのがポイントだ。

「先生っ、すみませんが早退します!」
「あー、わかった。
 なるべくならきちんと授業を受けてほしいんだがなあ」
「そりゃ部下に言ってくださいよ」

 軽口を叩きながら荷物を鞄に突っ込む。
 周りも慣れたもので、大して騒ぎもしない。

「では、アラン・F・高町、早退します!」

 鞄を持って教室を飛び出した。

 反応は……移動してるな。
 裏山の方か、これは。

 街中なので迂闊に魔法を使う事ができない。
 こういうところは不便だなあと思いながらも、仕方がないので普通に走る事にした。




 こうして俺がスムーズに学校を抜け出せるのにはちょっとしたわけがある。
 きっかけは、なのはに贈ったデバイスと、はやてに贈った銀細工。

 ちなみに、はやてのやつはあいつの誕生日に贈ったんだが、ただの銀細工では芸がないので、魔除けの呪式を刻んである。
 この辺りは一応お袋の研究ノートから取ったんだが、資質が足りない為実質俺には使えないものなのだ。
 気休め程度に刻んだんだが、結構いいものだと月村さんちの忍嬢が言っていたので侮れない。
 ちなみに月村の忍嬢は晴れてめでたく恭也の恋人に納まった。
 あの頃は恭也がいったい誰を選ぶのかでトトカルチョが出来そうな状況だったので、忍嬢を応援していた俺としてはいい結果になってくれて嬉しい。




閑話休題




 翠屋に取材に来ていた雑誌記者の人がはやてとなのはのアクセサリーに目をつけたのが転機。
 材料費と手間賃を貰う形でその人にも作ったら、あっという間に口コミで噂が広がってしまい、依頼量がどどんと増えてしまった。
 それなら商業化してしまえと気まぐれにベンチャーで会社を立ち上げたのがその半年後。
 気がつけば年商1億とかいう馬鹿みたいなブランドアクセサリー会社になっていた。

 おかしい、こんなつもりはまったくなかったんだが。

 ちなみにうちの会社は型物もあるが、基本はオーダーメイド中心である。
 注文を受けてから俺かもしくは、俺が直々に仕込んだ社員が製作している。
 実は俺指名の注文が多いときは、封時結界を使ってなんとか捌いていたり。

 まさかこんな事で制約を破る日が来るとは…………

 そんなわけで、トラブルが起こると授業中だろうがなんだろうが社員からのヘルプコールが入り、その度に早退しているのでクラスメイトも軽く流してくれるのだ。
 こういう事件を抱えているときには、抜け出す口実として重宝する。
 尤も、口実に使ったのは今回が初めてなのだけれでも。

「っと、この辺りか?」

 立ち止まり、周りに誰もいない事を確認するとバリアジャケットを纏う。
 この森に入ってから感覚がぼやけたという事は、

≪暴走体の他に発動してないものがあり、干渉し合っていると推測します≫
「だよな、ついてるぜ。初日から2個確保だ」

 ぺろりと上唇を舐める。

 いかんな、昨日から妙に好戦的だ。

「やるか」
≪wind area search≫

 森を蒼い風が吹き抜ける。
 この風全てが俺の感覚末端だ。

 反応有。
 北西に400m。

 暴走体だな、これは。

「行くぞ、ドラッケン!」
≪ja, my king. air walker≫

 ベルカ式の飛行魔法をかけ、空中を駆け抜ける。

 なお、ドイツ語準拠じゃないのは咄嗟にドイツ語が出てこない俺のせいだ。
 術式自体はベルカ式できちんと組んであるので問題はない。

 森の中を飛ぶのは危険だが、この飛行魔法は小回りが利くのが特徴。
 障害有りの400mなんぞ一瞬で詰められる。

「見つけた!」
≪封時結界、展開≫

 でかくて黒い毬藻の様な外見に、赤く光る目。

 ってか、何の生物を取り込んだんだ、これ。
 わからんが……とりあえず潰しておくか。

「風力開放────30%」

 目の前のものを吹っ飛ばす為の言葉を紡いだ。
 右手を限界まで弓のように引き絞る。
 左腕はガード用に軽く構え、

≪flash move≫

 さすが、わかってるね、相棒。

 一瞬で暴走体の背後を取った俺は、そのまま右腕を発射した。

「────我流・嵐槌」

 魔力が暴風となり、駆け抜ける。
 竜巻の様に渦巻いた蒼き風が暴走体を突き抜け、黒い物体は跡形もなく霧散した。

「なんだ、原生生物を取り込んだわけじゃなかったのか」

 取り込んでいたら元となった生物が残るはずだしな。

≪キングは手加減を覚えるべきだと私は思います≫
「あー、久々だったからなあ、やりすぎた。
 この感じじゃ20%でも多過ぎっぽいな」

 上に向けて撃ったからまだましだったが。
 鬱蒼と茂る森の中で、俺の上空だけぽっかり空が見えるようになっている。
 今日もいい天気だなあとドラッケンのお小言を聞き流した。

≪聞いているのですか、キング!≫
「聞いてる聞いてる。さ、こいつを封印して次を探すぞ」
≪……わかりました。sealing form≫

 コアがせり出す形に手甲が変化する。
 ジュエルシードに向かって右手を突き出した。

「flet une vente[フレット・ウネ・ウェンテ], ジュエルシード シリアルⅩⅩⅠ 封印」
≪sealing≫

 ふう、と息を吐き出すと思っていたより体に力が入っていた事に気づく。

 そう言えばあんな雑魚相手でも久々の実戦だ。
 そりゃ力加減も間違えるよなあと自己弁護する。

「さて、次は発動してない奴か。
 さっきのエリアサーチで見つからなかったから面倒だな。
 地面に落ちてたらサーチに引っかかるはずだから、地面の上にはない。
 とすると……」
≪空中か樹上ですね≫
「樹上が有力だな。目視は難しそうだし、強制発動でもするか?」
≪しかし、下手に刺激を与えるのも危険です。
 とりあえずエリアを絞り込みましょう≫
「わかった。エリアサーチ」
≪device form, area search≫

 加減を間違えたせいで結構多くの魔力を消費しているので、省エネで。
 風を使うのは魔力消費が激しいのだ。

 とりあえずではあるが、なんとか方向は絞れてきた。

「北側か。さっきの暴走体は他のジュエルシードを探してたのかもな」
≪なぜですか?≫
「ありゃ生物を取り込んでない所謂雑魚だ。
 ジュエルシードが2つになりゃあもっと強くなるかもしれないって推測はおかしいか?」
≪可能性としてはありえますね≫
「仮説だ仮説。
 ま、生物取り込んでりゃそいつの願いを叶える方向に動くだろ。
 なんせ願望器って話だからな」

 話しながら歩いてたら徐々に魔力濃度が上がってきた気がする。

「ん、この辺りかな」
≪air walker≫

 ちらりと時計を見るともう放課後に入っていた。
 なのは達はどうしているだろうかと頭の片隅で考える。

「こうも視界が悪いと探しにくくてしゃあないな」

 そう悪態をついた瞬間、

「っ!?」
≪ジュエルシードの発動を確認。位置……八束神社です!≫

 ここのとは別物か。

 と、そこになのはからの念話が飛び込んでくる。

【お兄ちゃん!】
【なのはか。今どこだ?】
【神社なの。ごめんなさい、目の前で発動させちゃった】
【どうしてそうなったのかは後で聞く。さっさと結界を張れ!】
【あ、僕が張ります】

 結界の発動を確認した。

 おお、ユー坊の奴、Aランク位って話だったが、後方支援としちゃ有能だな。

【俺も今別のジュエルシードを追ってるとこだ。そっちは任せるぞ】
【うんっ、気をつけてね】
【そりゃこっちの台詞だ。
 そうそう、今日の失態の罰として明日の鍛錬は3割増な】
【はにゃあああああっ!?】

 とりあえず念話で叫ばれると五月蝿いので強制切断した。
 ずっとサーチを続けていた相棒に声をかける。

「どうだ?」
≪詳細サーチで大体の位置は絞り込みました。後は地道に探すしかありません≫
「よし、行くぞ」




 見つけたジュエルシードは鳥の巣の脇に突き刺さるように存在していた。

「やれやれ、発見が遅れりゃ鳥が発動させてたな」
≪そうですね。とりあえず封印してしまいましょう≫
「あいよ。flet une vente, ジュエルシード シリアルⅧ 封印」
≪sealing≫

 先ほどと同じように青い宝石がドラッケンのコアに吸い込まれる。

 歩いて森を出るのは面倒だから、ついでに飛んだまま神社の方へ抜けてしまおう。

「やれやれだな」

 なのは達と合わせりゃ初日で3つ。
 かなり早いペースだが、これを残り17個分やらなくてはならないと思うと面倒でたまらない。
 厄介な事にならなきゃいいけど……

 森が切れる直前でバリアジャケットを解除。

 もう結界も解かれているから終わっていると思うんだが。

「あ、お兄ちゃん!」

 ぴょこんとツインテールを跳ねさせて、真っ先に俺に気づいたのはなのは。
 ユー坊は倒れた女性の近くでなにやら色々と手を加えているようだ。

「おう、なのは。お疲れさん。
 ユー坊、寝込みを襲うのはお兄さん感心しないなあ」
「なっ、なななななんて事言ってるんですか!?
 僕はただこの人を介抱しようとしているだけで──」
「にゃ? ユーノ君は襲うなんて危ない事しないよ?」
「あ……う……」

 真っ赤になって俯いてしまったユー坊を見て苦笑する。

 うちのなのははピュアだねえ。
 しっかし、襲うの意味がわかる小学3年生相当か……ちょっとやだな。

「最近の子供って……」
「ふにゃー」

 思わず遠い目をしながらなのはを撫でてしまった。

 なのははこのままでいて欲しいなあ。

「ま、ユー坊が汚れてる件は置いといて、とりあえず帰るか」
「にゃはは、そうだね。2人とも土ぼこりがすごいし、お風呂入らないと」
「あー、そうだな。そういう意味じゃないんだが、清潔なのは大切だ」
「でもまだ時間は──」
「阿呆。先は長げえんだ。きちんとペース作っていかないと途中で潰れるぞ」

 って言うか汚れてる事についてはもはや突っ込まないのか、そうか。




 とりあえず気絶した女性とその飼い犬らしき子犬を鳥居に寄りかからせる。

「記憶操作は?」
「僕がしました。
 探し物を手伝っている内に転んで気絶した事になっています」
「そうか」

 何があったか大体読めてしまった。
 大方、この姉ちゃんが親切心から手伝いを申し出たもんだから断れなかったんだな。
 このお人よしどもめ。

「にゃはは、大正解」
「よし、4割増におまけしてやろう」
「増えてるよ!?」
「冗談だ」

 なのはの性格じゃ断れないよな、そりゃ。
 しかし、後方支援としちゃ本当に有能だな、ユー坊は。

 気絶した姉ちゃんの方を軽く叩き、起こす。

「ん……ここは」
「大丈夫ですか?」
「あなたは?」
「失礼。そこにいる子の兄です。
 妹がどうもご迷惑をおかけしたようで、申し訳ない」
【うわ、アランさんキャラ違うよ!?】

 そこっ、聞こえてるからオープン回線で話すなっ。

 とりあえず口八丁で誤魔化し、礼を言って別れる。
 彼女は首をかしげていたが、まあ大丈夫だろう。

「よし、けえんべ」
「うん!」
「は、はい」

 ユー坊はいつまで俺に対して緊張し続けるのやら。
 いい加減俺に慣れても良い頃だと思うんだがなあ。




 翌日には学校内にあったジュエルシードを俺が回収。
 これで俺が3つ、なのはが2つ封印した事になる。

 今日の放課後、なのははアリサ嬢達と一緒に、プールに遊びに行くと言っていた。
 俺は副業(?)の注文が溜まっていたので、それを処理する事に。

 途中ジュエルシードの発動を感じたが、すぐに消えたので放っておいた。
 どうやらプールで発動していたらしい。
 無事封印したと言っていたが、あいつがジュエルシードを引き寄せてるんじゃないかとふと思ってしまった。

「そんななのはにトラブルマスターの称号をあげよう」
「にゃにゃ!? いらないよ、そんな称号」
「それ確かアランさんの渾名じゃ……」
「なんか言ったか、ユー坊?」
「いえっ、なんでもありません、sir!」

 ただちに敬礼したユー坊を見て、こっちの文化に感化されすぎだろと思ったのは、多分俺だけじゃない。




 ここの所探索続きでなかなか副業が進まない。
 はやての闇の書の件もあるからこの程度の事件はさっさと終わらせてしまいたいんだが。

「そう言や、これなんかヒントにならんかね」
≪あちらは行き詰ってますからね。とりあえず解析はしておきますか?≫
「ああ、頼むよ」

 ジュエルシードの件はなんとでもなるが、闇の書の件は早めに収めてしまわなければならない。
 最近じわりじわりとだが、徐々にはやてのコアの侵食率が上がってきているのだ。
 今まで集めた資料から色々と夜天の書に戻す方法を検討しているが、

「結局蒐集が外せないからなあ」

 それが一番のネックだ。
 あとバグのメインである防衛プログラムの切り離しにも絶対的魔力量が足らない。
 切り離すまでの手順や、切り離した後の再構築については目処が立ったのだが。

「問題点、多すぎだろ」

 特に蒐集。
 管理局の連中は絶対に許可を出さないだろう。
 なにせあちらは頭でっかちな奴等が多い。
 闇の書=殲滅となっていても俺は驚かないぞ。
 つまり、この時点で管理局を頼るという選択肢は消えた事になる。
 まあ、それでなくても頼りたくはないが。

 秘密裏に蒐集すると言う手もあるが、問題ははやてが援助を受けているグレアム氏だ。
 はやての言うグレアムおじさんがあのミスタグレアムだとすれば、監視は10中8,9、彼の使い魔だろう。
 確か双子の猫で、非常に優秀な使い魔と聞いた事がある。
 多分、蒐集しようとすれば横槍が入るだろう。

 まあ、それ以前になぜ監視をしているのかも不明。
 監視以外に動く気配がないというのも不気味だ。
 なんにせよ、

「ままならないな」
≪キング、考えすぎはよくありません。
 明日は探索も調査もやめて休息を取る事をお奨めします≫
「あー、不本意だがそうするかあ。
 明日は確か桜台JFCの応援に行くんだったな」

 スケジュールを確認する。
 父さんに応援に来てくれないかと頼まれ行く事にしたので、はやてとユー坊も連れて行く事になっている。
 男1人とユー坊が微妙に浮いている事以外は問題ないだろう。

 父さんが指導している桜台JFCはこの地区の少年サッカークラブだ。
 チームメンバーには俺のクラスメイトもいる。
 何度か入らないかと誘われているが、鍛錬と副業で手一杯だから断っている。
 それを除いても今更あの年代に混じって青春なんて気分にはなれない。
 もう精神だけなら40超えたおっさんだぞ、俺。
 かなり肉体に引っ張られている事は認めるが。
 ……いや、やっぱ20代からあんま変化してない気がするな。

 どうでもいい事を考えながらスタンドの電気を消し、ベッドに横になった。




 明日は晴れると良いんだが。雨の中での観戦は、泥が飛んで最悪だからな。
 

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内海 トーヤ
性別:
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自己紹介:
ヘタレ物書き兼元ニート。
仕事の合間にぼちぼち書いてます。

其は紡がれし魂の唄
(なのはオリ主介入再構成)
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魂の唄ショートショート
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遥か遠くあの星に乗せて
(なのは使い魔モノ)
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異邦人は黄昏に舞う
(なのは×はぴねす!+BLEACH多重クロス再構成)
目次はこちら

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