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リリカルなのは二次小説中心。 魂の唄無印話完結。現在A'sの事後処理中。 異邦人A'sまで完結しました。
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「左翼、弾幕薄いよ、何やってんのっ!」
「すみません! 第08小隊の防衛が突破されましたっ!!」
「今補給人員を送るっ! 第12正体と…………そこのお前、行けるか?」
「行けます! 嘱託魔導師高町…………出ますっ!!」

 叫び、飛行魔法を展開しながら少々現実逃避に耽る。
 そう言えば、この世界のアニメにガン○ムはなかったな、と。
 何やら聞き覚えのある台詞が飛び交っていたが、この世界にあれを知る人はいない筈だ。
 俺のように移動してきた人がかつていたと言う可能性は捨てきれないが。
 ばあちゃんの使った術式が遥か昔からあったのであれば、俺と同じ立場の人間がいたとしてもおかしくはないだろう。

「君は確かアースラから派遣されてきた……」
「アラン・F・高町嘱託魔導師であります。連携はどうしますか?」
「君の得意は?」
「1番は近距離、一応中距離も行けます。ポジションはフロントアタッカーです」
「助かる。うちの小隊は前衛が少なくてな」
「では、私は前に」
「ああ。レビン、高町とエレメントを組んでくれ」
「了解」

 近寄ってきた金の短髪を土埃でくすませたここの小隊長らしき人と短い打ち合わせ。
 レビン、と呼ばれた人はこの隊唯一の陸戦型フロントアタッカーとのこと。
 空戦可能な俺は行動の自由度が高いと言う事で一時的にガードウィングとして動く事を決め、もうすぐそこに見えてきた敵、ごつい2m級の機械兵達を睨みつけた。

「行くぞ、てめえら! いつも通り命令だ…………死ぬな!!」
「「「「「「了解!!」」」」」」

 小隊の人数は隊長を含めて6人、俺を入れて7人。
 俺達は合図と共に、雄叫びを上げながら機械兵の群れに突っ込んだ。




 事の起こりは2日前に遡る。
 片や嘱託魔導師、片や民間魔導師としていくつかの任務に従事してきた俺となのはは、突然の呼び出しに学校を早退した。

「出向任務?」
「ええ。地球から少し離れた所にある管理世界なんですが、現在現地犯罪者の大規模取締を行なっているんです」

 聞けば出向依頼はその付近を管轄としている次元航行艦からだと言う。
 元々犯人を追いかけていたのはそこの地上部隊の1つなのだが、規模が大きくなってきたので近場の艦に助けを求めたんだとか。
 地上と次元航行艦、通称陸と海は管理局内でも仲が悪い事で有名だが、こうした辺境世界においてはそこまででもない。
 上層部の人間が多く、いがみ合っているミッド地上本部や本局と比べ、辺境に行くにつれて管理局員数が少なくなっていくのが主な理由だ。
 誰しも、死にたくはない。
 絶対的戦力が足りない辺境ではよく見られる光景だ。
 とにかく、目標の根城を突き止めた双方局員が戦力不足を理由に、近場の次元航行艦に助けを求めたらしい。
 その中にアースラも含まれていた、と言う訳だ。

「目標は3人……いずれも研究者のようです。ただ研究内容が……」
「『ロストロギアの戦力利用』か……また物騒なものを研究してるな」
「ええ。さらに彼等にはロストロギアの不法所持・利用容疑がかかっています」
「ロストロギアの名前と能力は判明してるのか?」
「最近、ユーノに無限書庫の整理を頼みまして。
 ありましたよ、該当しそうなロストロギアが」
「………………『機械の王国[ラビリッシュデルメヒャニッシェン]』ねえ。また厄介そうな物を」

 差し出された資料は恐らくユーノが必死に集めたものなのだろう。
 かなり詳細に渡ってロストロギアの能力が記されていた。
 『機械の王国』
 使用者の意思に従う機械兵を生み出し、自在に動かす事のできるロストロギア。
 研究者はいずれも資質は低いが魔導師。
 マルチタスクとオートパイロットを利用すればかなりの数の機械兵を操れる筈だ。

 なるほど、兵器だな…………外道が。

 確かに有効利用すれば強大な戦力になるだろう。
 ただし、動力が非人道的すぎる。
 動力源は、人間の生命力。
 どうもこいつら、現地民を拐って動力にしようと目論んでいたらしい。
 現地で起こっていた誘拐事件を地上部隊が捜査していたところ、機械兵と接敵。
 更に捜査を進めたところ浮かび上がってきたのがこの3人の研究者、と言う訳だ。
 ちらりと窺った妹の顔色は一見してわかる程青い。
 なのはは俺の視線に気づくと、青ざめた表情のまま気丈にも俺を見返してきた。
 どうやら引く気はないらしい。

「本来なら僕や艦長が出張るべき事件なんですが……」
「わかってるさ。このタイミングで俺達を呼んだって事は、お前やリン姉は他の任務が入ってるんだろ?」
「任務と言うわけではないんですが……ある意味では間違ってません。
 流石にフェイト達だけで本局に行かせたら、身柄がどうなるかわかりませんから。
 僕と艦長、そしてエイミィは明日から1週間近く本局に張り付きになります」
「……そうか。もうそんな時期なのか」

 本局に、と言う事はとうとうフェイトの身柄拘束が解除されるのだろう。
 以後しばらくは管理局への無償奉仕を義務付けられるが、それ以外の行動制限はなくなる。
 形としては保護観察処分。
 考えうる限り最も罪が軽いだろう。
 フェイトが関わったのが次元断層さえ引き起こす事件だった事を考慮すれば、罰はないに等しい。

 もうジュエルシード事件が解決してから3ヶ月は経つもんな。
 当初予定されてた半年より大幅に早いのは大方ミスターが動いたんだろ。

 尤も、裁判が終了してもしばらくは研修などがあるらしく、同じ戦場に出る日はまだ少し遠い。
 何か緊急性の高い事件が起こった時ならともかく、しばらくは嘱託魔導師として動く事はないだろう。
 1ヶ月前の闇の欠片事件は特例中の特例なのだから。
 喜色に染まるなのはを横目で見ながら俺とクロノは会話を続ける。

「すると送り込める戦力としては……」
「はい、先生達と武装隊だけになります。
 その間アースラは非戦闘員だけになるので、安全を期して今回は本局で停泊ですね」
「なるほどな。ちなみにこの任務……戦争だよな?」

 数と数のぶつかり合い。
 もちろん、機械兵1機と局員1人が等式で結ばれるわけではないが、状況がそうなってしまうのは避けられないだろう。
 故に俺達の危惧はただ1つだ。

「ええ。なのでできればなのはは今回参加を見送って欲しんですが」

 最悪を想定すれば結論はそうなる。
 更に言えば対象ロストロギアの能力が最悪だ。
 とてもではないが子供に就かせる任務ではない。

「お兄ちゃん」

 くい、と裾を引かれる感覚に再度なのはを見て、知らず溜息が漏れた。
 俺達の中にある迷いや葛藤などお見通しなのだろう。
 口こそ挟んでこなかったが、なのはは明らかに私も行くと視線で訴えてきていた。
 この頑固な妹の意思を折る事は、俺には無理そうだ。

「………………わかった。アラン・F・高町、高町なのは両名は出向を承諾する」
「先生!?」
「ただし、今回なのはは後方支援のみの参加だ。前線には俺が出る」

 物凄く不満そうなオーラを左半身に浴びながら俺は肩を竦める。
 そんな風に主張をされても、これが妥協点なのだから仕方がない。
 流石に年齢1桁の子供を戦場の最前線まで伴うのは僅かに残る俺の良心がアウトと訴えてきているのだから。
 いや、まあ、後方にしろ戦場に連れて行く時点で大分アウトなのだが。

「悪いがこれ以上の妥協はしないぞ?
 戦場ともなれば衛生兵はどうやっても足りなくなるし……なのはは拙いながらも回復魔法を使えるからな」
「……いいんですか? 僕としては2人共に断られる事も覚悟していたんですが」
「クロノやリン姉には借りもあるからな。
 ここで断るんなら最初から嘱託資格なんて取らねえよ」

 そもそもなのはの社会勉強の為に今の立場を得たのだ。
 俺も少なからず甘さを捨てていく必要がある。
 本格的に管理局へ所属すれば、こうした任務は山のようにあるのだから。
 尤も、そう言いつつ後方支援に置くのが俺の甘さなのかもしれない。

「……出向は明日。作戦開始は1300を予定してます。
 アラン・F・高町嘱託魔導師及び高町なのは民間魔導師は出向後あちらの指揮官の指示に従ってください。僕からも、口添えはしておきます」
「「了解!」」




 右拳から放出される蒼い砲撃がいくつもの機械兵を薙ぎ倒す。
 すかさずオレンジ色の短髪を靡かせたレビンが吶喊。
 その手に握られている棒状の杖の両端から伸びるのは橙色の魔力刃。
 その魔力刃で突き、薙ぎ、斬り裂いて行くレビンの姿は一端の槍兵だ。
 まあ、一流とまでは言えないし、槍を扱うには些か小柄だが。
 その小柄さを生かした小回りの利く機動力と槍兵には珍しい防御力の高さが、レビンをフロントアタッカーたらしめているらしい。

「フレット・ウネ・ウェンテ!」
≪knuckle shooter≫

 そしてレビンが身を引くと同時に俺の両手から誘導弾が発射される。
 俺はあまりこちらの才能がなかったが、3発以下のスフィア操作における精密性ではなのはにまだ勝てていると言う自負がある。
 もうすぐ抜かれそうではあるが。
 誘導されるスフィアはレビンの視覚に入り込もうとしていた機械兵を撃ち抜き、レビンが目の前に立ち塞がる敵を斬り捨てる。
 それを皮切りに後方から飛んでくる砲撃。
 潮時を感じ取って俺達が大きく後退すると、眼前の敵兵が白い極光に包まれ消滅した。
 思わず、口笛を吹く。

「広域魔法か……コントロールが半端ねえな」
「ええ、隊長の魔力コントロールはここの地上部隊でも有名なんですよ、高町さん」
「アランで構わねえよ、レビン一士。いるとこにゃいるもんだな、実力者ってのは」
「僕もレビンで構いませんよ」

 少し息の荒いレビンと拳を合わせながら俺達は同時に笑う。
 事実、俺達と極光の間は5mも開いていなかった。
 精密照射の難しい広域魔法でこれだけのコントロール力を見せるのであれば、あの金髪の隊長さんはかなりの実力者なのだろう。

 いい小隊に随伴できたもんだ。
 後方の心配をしなくていいってのは楽だな。

「しかし、長引いてるよなあ、この作戦。昨日中には終わると思ってたんだが」
「確かにそうですけど……何か用事でもあったんですか?」
「ああ。今日は妹分達と一緒に聖王協会に行く予定だった」

 実を言えば今日がカリムとの約束の日である。
 万が一、長引いた場合を考えて八神家だけでも面会できるよう手筈は整えてあったが、本来なら俺も同席する予定になっていたのだ。
 任務が入ってしまった俺の代わりにアースラスタッフであるランディが同行してくれている筈だが、任務後に侘びと礼の品を用意しなければならないだろう。
 聖王協会の面々とランディに。

「おう、お前等! 違法研究者が閉じこもってる場所を第03小隊が発見したらしい。俺達も向かうぞ!」
「「了解!」」

 小隊長の威勢のいい声に俺とレビンも声を張り上げる。
 ようやく任務の終わりが見えてきたと、俺は安堵の息を人知れず零すのだった。

────────interlude

 空が、暗い。
 そこら中から聞こえてくる呻き声の中、私はただただ走り回っていた。
 作戦開始からもう丸1日は経つ。
 にも関わらず、運び込まれてくるけが人の数は経るどころか右肩上がりに増えていっていた。

「包帯、持って来ました!」
「よし、そこに置いといて! お嬢ちゃんはそこにいる比較的軽症な奴等の手当てを」
「はいっ!」

 間髪入れずに飛んでくる指示に私はテントの一角へと足を急がせる。
 回復魔法が使えると言ってもそれはお兄ちゃんに比べてのこと。
 私の腕はシャマルさんに遠く及ばない。
 だからこの場でできる事と言えば、必要な道具を運んだり、簡単な手当てを施す事だけでしかない。
 テントの一角に固まって座り込んでいる人達は、私の腕に巻かれている救護班の腕章を見るとほっとしたような顔をして。
 私はその中によく知る顔がないのを見て取り人知れず安堵の息を漏らす。

 これが……戦場。

 正直に言えば、舐めていたのかもしれない。
 平和な日本で育った私にとって、戦場なんて言葉は対岸の火事よりも遠い出来事で。
 だけど、現実は無慈悲で、残酷だ。
 作戦開始後しばらくに始まった現実は、私の足を竦ませてしまうのに充分すぎる威力を持っていた。
 そんな私の背中を、文字通り蹴飛ばしたのがさっき私に指示を出していた黒髪のお姉さん。




『お嬢ちゃん、やる気がないんなら帰りな。
 あんたが迷えば迷うだけ、そいつ等の怪我は悪化する。正直、足手まといだ』
『でも、私どうすればいいのか……』
『1から10まで教えらんないとわかんないのかい?
 ああ、あんた出向人員だったね。もしかして戦場は初めて?』
『……はい』
『ったく、こんな子供を連れて来るなんてあんたの保護者は何考えてんだか……
 まあ、いい。できる事をやりな。
 それさえ無理ならテントの端っこで膝抱えて私達の邪魔だけはしないでちょうだい』
『あのっ、私っ、私……』
『…………はあ。とりあえずリストにある薬とか取ってきてくれる?
 それから、簡単でいいから応急手当。その位はできるだろう?』
『はいっ』




 ちょっとぶっきらぼうで、言葉は悪いけど、多分きっと優しい人。
 名前は聞いていない。
 自己紹介の時間でさえ惜しかったから。
 順々に回復魔法をかけながら包帯を巻いて、丁度列が途切れた時にお姉さんがこちらにやってきた。
 乱れたセミショートの髪に、疲れが滲んだ表情。
 だけど、私よりも重傷者を沢山診ていた筈なのに、まだやれるとばかりの強い瞳が印象的だった。

「ん、そっちも小康状態に入ったみたいだね」
「はい。あの……終わりが近いんですか?」
「……そっか、あんた戦場は初めてって言ってたね。これは嵐の前の静けさって奴さ。
 しばらくしたらまた大量に運び込まれてくる。だから今の内に休んどきなさい」
「……はい」

 ぐるりとテント内を見渡す。
 軽傷だった人達は私の治療を受けてすぐにまた出撃して行った。
 ここに寝ているのは再出撃できない重傷の人達。
 中には腕や足を失った人がいて、その事実に目を逸らしたくなる。
 だけど、逸らしてはいけない事位私にもわかっている。
 これは、現実なのだから。
 ふわり、特徴的な香りを感じて俯きがちだった顔を上げる。
 お姉さんはどこか力の抜けた表情で煙草を咥えていた。
 私の周りに吸う人はいないので馴染みのないにおい。
 なのに不思議と嫌な臭いだとは思わなかった。
 多分、お姉さんが煙草を吸う姿が妙に似合っていたからなのだろう。
 彼女は私の視線に気付いたのか、私を見ながら苦笑して、

「悪いね。子供の側で吸うべきじゃないってわかってるんだけど……こう言う任務の時はどうにもやりきれなくて」
「いえ、構いません」
「医者の不養生はよくないって知ってるんだが……っと、ごめんね。
 私はセリカ。セリカ・ヴァンガード。一応ここの地上で医務官をしてるの」
「私は……アースラから来ました民間協力者の高町なのはです」
「そっか……局員でもないならあの場面で即応できなくても仕方ない、か。
 正直私の言い方がきつかった。ごめんね」
「いえ、セリカさんに言われなかったら、私本当にお荷物になるところでしたから」

 いつだったか、管理局は警察と裁判所を一緒にしたような所だとお兄ちゃんが表現した事がある。
 そこに権力を加えたらまるで軍隊のようだ、とも。
 冗談交じりの口調だったからあまり深くは考えていなかったけれども、きっとあの話は半分以上本気だったのだろう。
 そして私にとっては軍隊なんて言葉は遠すぎて、明確なイメージを思い描けていなかったのだと思う。
 端的に言ってしまえば、覚悟が足りなかったのだと。
 それでも私は思う。
 分厚い雲が暗雲とたち込める空を見ながら、あの空の下で必死に戦っている人達を想いながら。

「でも私……争いは嫌いです」
「……そんなの、皆同じさ。誰が好き好んで争いたがるもんかい。
 私だって、あそこで戦ってる奴等だって。
 …………尤も、一部の狂人はそうでもないらしいけどね」
「セリカさんは……どうして管理局に?
 あ、言いたくなかったらいいんです。ちょっと気になっただけなので」

 この妙に格好いいお姉さんが、何故管理局で働き続けているのか少し興味があっただけ。
 慌てて言葉を付け加える私に、セリカさんはくすりと笑って。
 それで気付いた。
 凄く大人に見えていたセリカさんが、実は恭也おにいちゃんと同い年位だった事に。

「別に構わないよ。そうだね……私の場合は成り行き、と言うか偶々だった」
「偶々……?」
「そ、偶々私には回復魔法の才があって……当時まだ年齢が2桁になったばかりだった私がすぐに就ける仕事が管理局にあったから、だね」
「そんなに小さな頃からなんですか!?」
「お嬢ちゃんがそれを言うかね?
 ……まあ、あれよ。こう言うと見も蓋もないけど、お金が必要だったのさ。
 私と弟は孤児だったからね」

 一瞬、後悔しかけた。
 これは触れてはいけない領域の話だったんじゃないかって。
 セリカさんはそんな私の考えもお見通しなのか、短くなった煙草を揉み消すとくしゃりと私の頭を撫でた。
 細い体躯からは想像もつかない程、その手は力強くて。

「大丈夫。今はもう、そんな理由じゃないから。
 弟もそこそこ大きくなって、1人立ちできるようになってきたしね。
 尤も私がここにい続けているのは、その弟のせいだけど」
「弟さんの、ですか……?」
「ああ。なんの因果か弟にも魔法の才能があってね。
 それが攻撃魔法だったもんだから……いっつも傷作って帰ってくるのよ、あの馬鹿。
 フロントアタッカーである以上仕方のない事ではあるんだけどさ。
 だから……あの馬鹿が怪我をして帰ってきた時真っ先に癒し手やれるように、私は今もここにいるの」

 その言葉に、ああこの人は本当に弟さんが大好きなんだな、と思った。
 力強いあの手は、今も昔もずっと弟さんを護ってきた証なんだ。

「これが私の理由。どうだい、ちっぽけでくだらない理由だろう?」
「そんな事ないです!」
「うわっ!?」
「そんな事……ない、です」

 突然の大声に驚くセリカさんに、私は同じ言葉を繰り返す。
 お兄ちゃんが傷を負って帰ってきたら、真っ先に癒してあげたい。
 真っ先にお帰りって言ってあげたい。
 だけど私はセリカさん程回復魔法に長けている訳ではないから。
 だからせめて私の知らない所であの人が独り傷ついてしまわぬように。
 以前隣に立ちたいと言った時はそこまで考えていなかったけれど、きっと私が考えていたのはそう言う事なんだ。

「…………あんたの大切な人もあそこにいるのかい?」
「はい……多分今も、戦ってるんだと思います……お兄ちゃんは」
「兄貴、か……心配だねえ」
「セリカさんの弟さんも」
「私はいいんだよ、姉だからね。いつだったか誰かが言ってたよ。
 上の兄姉ってのは後から生まれて来る弟や妹を護る為に先に生まれるんだって。
 それなら私は…………世界よりあの子を護りたい」
「少しだけど、わかります」
「あんた、いい子だね。こんな戦場が似合わない位に」
「セリカさんも、ここ、似合わないと思いますよ」
「違いない。こんな場所が似合うようになったら、私が廃るよ」

 お互いに、苦笑。
 まさかこんな場所で自然に笑えるなんて思ってもみなかった。
 突如慌しく聞こえてくる怒号に私達は顔を見合わせて。

「ヴァンガード陸曹! 重傷者3名、軽傷者8名です!!」
「重傷者はそこの空きベッドへ! 軽傷者はそっちに並びな!!
 ……さ、行こうかお嬢ちゃん。こっからまた忙しくなるよ」
「セリカさん、なのは、です」
「そうだったね……なのはちゃん、行くよっ!」
「はいっ!!」

 返事をして私とセリカさんは走り出す。
 戦場では今も、多くの人が戦っている。
 だから私は、私達は、私達の戦いを続けよう。

────────interlude out

 唐突に上がる歓声はある1点を中心にして戦場にいる全ての人に伝わっていく。
 歓声と同時、機械兵達は動きを止め、そのまま砂のように崩れ落ちて行って。
 目前に迫っていた機械兵が余韻も残さずに消え去った事で、俺はようやく現状を把握した。

「終わった……のか?」
「みたいですね。アランさん、お疲れ様です」
「ああ、レビンも……って、レビンの場合まだ事後処理が残ってるのか」
「あはは。僕の場合は現場の後片付け位ですよ。本当に大変なのは隊長位のもんです」

 苦笑するレビンに確かに、と頷く。
 これだけの規模の事件だったのだ。
 隊長格の事務仕事は恐ろしい量になるだろう。
 心に余裕ができてきた事でふと気付く。
 彼は、丁度クロノと同い年位に見える事に。

「そう言えば……なんで俺に対して敬語なんだ?
 まあ、最初からタメ口だった俺が言えた台詞じゃないんだが」
「……どうしてでしょう?」
「いや、俺が聞いてるんだけどな」

 ことりと首を傾げるレビンにはまだ少年の面影が色濃く残る。
 対外的に言えば今の俺は8歳、肉体的には11歳。
 レビンがクロノと同い年だと仮定しても少し年上の筈だ。

「うーん、僕もよくわからないんですけど、なんかアランさんって年下のような気がしないんですよね。ちなみに今おいくつですか?」
「…………8歳?」
「……疑問系なんですね。
 実はもっと上だと思ってました。最低でも僕と同い年位かなあと」
「ちなみにレビンは?」
「今年15歳になります。結構年離れてたんですね」
「みたいだな。ならもっとくだけて話してくれよ。
 敬語を使われると背中がむず痒くてかなわん」
「あはは、わかりま……わかった」

 しっかし若いとは思ってたけど15歳ね……ま、こいつにも色々あるんだろ。

 ついでに小隊長殿になんで子供が、と突っ込まれなかった理由を理解した。
 レビンと俺の身長はさして変わらないのだ。
 レビンの方が少し高い程度。
 15歳にしてはかなり小柄な方なのだろう。

「おい、お前等! 俺はこれから事後処理の打ち合わせに行って来るから、全員本部に席に戻っといてくれ」
「「了解!」」

 隊長から声がかかり、他のメンバーと合流する。
 合流した他の面子の顔には疲れが滲むが、そんな疲れを感じさせない雰囲気で皆レビンを小突いている。
 どうやらレビンはこの小隊において結構な人気者のようだ。
 ぱっと見で皆レビンよりも年上のようだから、弟みたいに可愛がられているのだろう。

 本当、当たりだったな、この小隊。
 ここまで雰囲気がいい部隊ってのもそう多くない筈だし。

 そんな皆のじゃれあいを少し微笑ましく思いながら歩いていると、遠くに本部が見えてきた。
 これで俺の仕事は終わりだ。
 あくまで俺はアースラから派遣された外部人員。
 事後処理に参加する現地の局員とは扱いが異なる。

「それでは自分はここで。お世話になりました」
「こちらこそ、礼を言わせてくれ。
 うちの小隊は後方の人間が多いから、いっつもこいつを突っ込ませてばかりでね。
 今回は君がいたから安心して見ていられた」
「そうそう。レビンが無傷で作戦を終えるなんて配属以来の快挙だしさ!」
「み、皆!? それちょっと酷くないかな!?」
「そう言う事は怪我しなくなってから言うんだな」

 どっと笑う小隊の姿に、俺も頬を緩める。
 最初に発言した背の高い茶髪の兄さんが1歩前に出る。
 どうやら彼がここのまとめ役らしい。

「ありがとう。君のおかげで誰1人欠ける事なく今作戦を終わらせられた」
「自分の力なんて微々たるものですよ。レビンは本当に優秀な前衛でしたし。
 この小隊と一緒に戦えてよかったと思います」
「そうか……また、会えるといいな。ただし戦場以外で」
「ですね。戦場以外で」

 差し出された手を握る。
 今は敬礼よりもこちらの方が自然だと思えたから。
 手を離し、共に戦った人達を見渡す。
 土埃で汚れて、お世辞にもいい格好だとは思えない。
 だけど、彼等は何よりも格好よく俺には見えた。

「別れの言葉を言わんのがうちの流儀だ。だから、君にも言わない」
「はい。それではアラン・F・高町嘱託魔導師、出向任務を終え帰還します。
 …………また、いずれ」
「ああ、またな」

 頭を1度だけ下げて、俺は踵を返す。
 また会う確率は低いけど、きっとこれは良縁だったに違いないと思いながら。
 それ位気持ちのいい人達だった。
 そうして俺は本部脇のテントから飛び出しこちらに向かって駆けてくる栗毛の少女に大きく手を振って、同じように走り出す。




 互いの無事を、喜ぶ為に。
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プロフィール
HN:
内海 トーヤ
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男性
自己紹介:
ヘタレ物書き兼元ニート。
仕事の合間にぼちぼち書いてます。

其は紡がれし魂の唄
(なのはオリ主介入再構成)
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魂の唄ショートショート
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遥か遠くあの星に乗せて
(なのは使い魔モノ)
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異邦人は黄昏に舞う
(なのは×はぴねす!+BLEACH多重クロス再構成)
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