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リリカルなのは二次小説中心。 魂の唄無印話完結。現在A'sの事後処理中。 異邦人A'sまで完結しました。
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 日々は穏やかに通り過ぎていく。
 俺は学校と本局を往復するような毎日を送りながら、こう言うのも悪くないと思い始めていた。
 殺伐とした世界に生きてきた俺にとって、それは本当に心休まる時間で。
 そう、それは俺みたいな奴でさえ、こんな時間がずっと続くと錯覚してしまう程で。

 季節は流れ、一一月。
 運命の歯車が再び回り始める。

「それじゃあ行って来るけど、俺がいないからって訓練するんじゃねえぞ」
「う……わかってるよぉ。
 最近はお父さん達もチェック厳しいし、ちゃんと休むから大丈夫」

 唇を尖らせて言うなのはに嘆息する。
 最近は接し方もかなり気安くなり、色んな表情を見せてくれるようになった。
 それはいいのだが、

 チェック厳しくなってなかったら隠れてやってたな、これは。

 あまりにも魔法訓練に精を出しすぎていたのを見かねた俺は、夏の始まり頃なのはを注意し始めた。
 が、なのははこれを頑なに受け入れず、仕方なしに最終兵器桃ちゃんを投入。
 桃ちゃんの説得とシロさんの経験から来る休養の重要性の話、そして俺がクロから受け取ってきた正規育成プログラムの資料によりようやくなのはは折れ、週に二日休養日を取る事で合意した。
 俺としては訓練負荷の方を落としてもらいたかったのだがそこはなのはが譲らなかった。
 その変わり、恭さんの話を聞く時間を設ける事にした。
 話の内容は恭さんの修行時代の話や、みーちゃんに教えてた時に思った事、さらには剣を握る時の心構えなど等多岐に渡る。
 当然これは、なのはの心技体のバランスを取る為のものだ。
 尤もかなりためになる話なので、任務が入っている時以外は俺も必ず参加するようにしている。
 恭さんの話はいつも深い。
 本当にあの人は一九歳なんだろうか?

 閑話休題。

「今日は……アリサとすずかに会うんだっけ?」
「うん。フェイトちゃんのビデオレター、さっき届いてたから一緒に見ようと思って」
「そっか、帰ってきたら俺にも見せてくれよ」
「これから会えるのに?」
「それとこれとは別物なんだよ」
「にゃはは、そっか。フェイトちゃん達によろしくね」

 頷いて別れる。

 執務官且つ事件関係者である俺は彼女等に会う事が出来るが、民間協力者であるなのははそう簡単にいかない。
 被疑者であるフェイトは基本、外部との接触が許可されないのだ。
 まあ、ビデオメールのやり取りが出来るだけましと言えるが。

 魔法使用許可はあらかじめ取ってあるのでベオに転送陣を開いてもらう。
 そのまま俺はアースラへと飛んだ。




「っし、次で裁判は終了だな」
「でも早いね。フェイトの裁判終了までもうあと二週間ちょっとだよ」
「うん」

 資料を送り終わり休憩スペースで俺とユーノ、フェイトとクロはくつろぐ。
 ここのコーヒーはそれなりなので、俺としてもありがたい。
 ここ最近では珍しくない人型のまま、ユーノはジュースを片手に言葉を続けた。

「初公判は六月だったから、結構進行早いよね」
「嘱託試験の合格が効いてるな。おかげで何ステップか飛ばせた感じだ」
「そうそう、クロも大分奮闘したしな」
「どうして君はすぐに僕をからかおうとするんだ!?」
「反応が面白いから」
「くっ……まあいい」

 冷静さを装ってもクロの頬は少しだけ赤い。
 それを見ながらフェイトがくすくすと笑う。

 うん、大分普通に笑えるようになってきたな。

「ありがとう、クロノ達のおかげだよ。……ユーノもごめんね……証人なんて」
「あはは」

 少しすまなそうな顔をした彼女にユーノは渇いた笑みを返す。

「ずっとなのはの家にいるわけにもいかないし、ちょうどいい機会だったから」
「ま、恭さんの殺気もそろそろ洒落にならないレベルになってきてたしなあ」
「……なんでジンゴはよくてボクは駄目なんだろうね」
「普段の行い?」
「その点から言えば君の方が酷いと思うがな」
「じゃあ人徳って事で」
「納得いかないよ……」

 疲れきったユーノの言葉に皆で苦笑いをする。

 ま、原因はなのは達と風呂に入った事だろうけど。
 ……シスコン恐るべし。

 最初から人間として高町家に来たんだったらもう少し扱いはよかったと思うぞと言うと、ユーノが本格的に肩を落とす。
 とは言えあれは不可抗力だったらしいので、ユーノの背中を軽く叩いて慰めた。

 きっと認めてもらえる日が来るさ………………その内。

「そう言えばなのはの所にビデオメールはもう送った?」
「うん! 昨日送った」

 すっとこの場にいる全員の視線が俺に集まる。
 予想できた反応だったので、こくりとコーヒーを飲み込んでから口を開いた。

「届いてたぞ。今日アリサ達と一緒に見るんだって喜んでた」
「そっか」

 ふわりと微笑んだフェイトに頬を緩ませて笑い返すと俺は席を立つ。
 と、彼女が俺を見て首を捻った。

「ジンゴ、もう行くの?」
「ああ、ばあちゃん所に顔出しに行かねえと。
 そろそろ行っとかねえと地球に戻るのが遅くなるし」
「そっか、じゃあまたね、ジンゴ」

 ユーノの言葉に軽く頷く。
 すぐにフェイトの方を向いて、

「次に会うのは最後の裁判かな。アルフにもよろしく言っておいてくれ」
「うん。ジンゴもありがとう」

 手を振り合い、アースラ組みと別れる。
 最近になってようやく普通に話せるようになってきたフェイトに安堵を覚えながら、今度は本局に向かって飛んだ。

 最初はなんか壁があったしなあ。

 よく考えれば、事件中最後の時以外はほぼ執務官としてしか接してなかったのだ。
 フェイトの反応は仕方なかったのかもしれない。
 そんな事を考えながらゲートを出ると、妙に本局内の空気が慌ただしい事に気付く。

「……なんだ?」

 ばあちゃんの執務室に行こうとしていた足を返す。
 情報が最も早く入ってくる場所、運用部へと足を運ぶと見覚えのある薄紫の髪が目に入った。
 メガネをかけた流麗な美女はその顔を厳しく歪め、俺は彼女へ声をかける。

「レイ姉、何があった?」
「……ああ、ジンゴ君」

 レティ・ロウラン提督。
 以前フェイトの嘱託試験の時に知り合ったリン姉の友人だ。

「武装局員の配置要請が来たのよ」
「また事件か。どの位?」
「シーベル定期観測隊からの要請で、C装備四〇名程」
「……結構多いね。ロストロギア?」
「そう言ってたわ。ものは何か分からないけど、稼動しているみたいだって」

 すでに人員を動かし始めたのだろう。
 彼女は椅子に深く腰掛けると溜息をついた。

「まったく次から次へと。事件はなくならないわね」
「ま、仕方ないさ。次元世界は広すぎるよ」
「そうね。なんだって上はどんどん管理範囲を広げようとするのかしら。
 ……ジンゴ君は何か知ってる?」

 質問は統幕議長直属の執務官に対するものなのだろう。
 表情は穏やかだが、メガネの奥にある目は笑っていなかった。
 が、残念ながらそれに対する答えを俺は持ち合わせていない。
 仕方なく俺は首を横に振る。

「何も。むしろ俺が知りたいくらいだね。ばあちゃんも首を捻ってたし」
「もっと上、もしくは系列が違う……か。
 議長が外れている事を考えると、かなり限られるわよ」
「上じゃねえかと思ってるんだけどガードがかなり堅いんだ。
 ばあちゃんの立場だとそうそう無理はできねえし」

 それが歯がゆい。
 大層な役職についていても、世間の評価が高くとも、彼女の権限はそう大きくない。
 彼女が本当の意味で自由に動かせるのは、実質、私兵である俺ただ一人なのだ。

「お飾り、か……」
「それはクローベル統幕議長が?」
「うん。色んな方面に影響力は残ってるけど、実際にはそんなもんだってさ。
 俺はここに入ってまだ三年目だし、そう突っ込んだ所までは見れてないけど……」

 レイ姉の傍に寄る。
 誰に聞かれているか分からないので声を潜めた。

「この組織、かなりキナ臭いよ」
「っ!?」
「特に上層部。俺達でも突っ込めない何かがある」
「……外も内も敵だらけね」

 再び溜息をつく彼女を元気付けるよう明るい声を出す。

「まあ、俺達に出来る事はそれこそ山のようにあるさ。
 今も世界のどこかで悲しい想いをしている人達がいる。
 それを助けるのが、俺達現場の人間の役割だと思うし」
「そうね。分からなくても出来る事はある、か」

 気を取り直したかのように彼女が座り直したところで通信が入った。

「はい、本局運用部、レティ・ロウランです」
『ああ、ロウラン提督。うちのジンゴ、そっちに行ってないかしら?
 あの子こっちに来るって言ってから結構な時間が経ってるのにまだ来ないのよ』
「やべ、忘れてた」
『やっぱりいたわね、ジンゴ。途中寄り道するなら連絡くらい入れなさい』
「ごめんごめん、すぐ行くよ」
『じゃあそう言う事で。ごめんなさいね、ロウラン提督』
「いえ、こちらこそ引き止めてしまい申し訳ありません。すぐ送り出しますね」
『ええ、ありがとう。それでは』

 通信をきったレイ姉に笑いを堪えた顔で見られ、ばつが悪くなって目を逸らす。

「さ、ジンゴ君は早く行きなさい。おばあちゃんがお待ちかねよ」
「はは、そだね。ちゃっちゃと行く事にするよ。仕事の邪魔してごめんね」
「暇な時に来てくれるなら大歓迎なんだけどね。
 そうそう、たまにはうちの方にも顔を出してってね。うちの子も喜ぶし」
「ああ、グリフィスか。それじゃあ今度そっちにも顔出すよ。じゃあ、またね」

 軽く挨拶をして運用部を出る。
 表情を切り替えて足早にばあちゃんの執務室を目指した。

 何かが起こり始めている。

 俺は嫌な予感を胸に、本局の廊下を駆け出した。
 

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内海 トーヤ
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ヘタレ物書き兼元ニート。
仕事の合間にぼちぼち書いてます。

其は紡がれし魂の唄
(なのはオリ主介入再構成)
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遥か遠くあの星に乗せて
(なのは使い魔モノ)
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(なのは×はぴねす!+BLEACH多重クロス再構成)
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