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リリカルなのは二次小説中心。 魂の唄無印話完結。現在A'sの事後処理中。 異邦人A'sまで完結しました。
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「ったく、執務官にゃ年末年始もないってか?」

 年末、闇の書事件の詳細な報告書を本局で作成していた俺は、武装隊からのヘルプコールに緊急出動。
 そのままそこの部隊長と事務局員に付き合わされ、全てが終了して解放されたのは昨日の深夜だった。
 まあ、昨日の夕飯はその部隊長の奢りだったのだけども。
 それにしても、

「……はあ、なんとか間に合ってよかった……」

 すでに三が日は終了してしまい、今晩から皆で二泊ほど旅行に行く予定だったのだ。
 これで事件処理が遅くて間に合いませんでしたとか言った日にはアリサが怖い。
 思わず漏れてしまった溜息を慌ててかき消し、朝焼けの海鳴を歩いていく。
 部屋に到着したと同時、俺は気を失った。




「────ん、ジンゴ君!」
「んあ? ………………なのは?」
「もう! いつ帰ってきたのかは知らないけど、ちゃんとベッドで寝てないと風引くよ?」
「んー、今何時?」

 寝惚け眼を擦りながら、手探りで携帯を探す。
 すると、はい、と携帯が手渡された。

 はて? 今のは誰の手だ?
 なのは……は何故か俺の上に乗ってるから届く所にいないだろうし……

 と言うより彼女はいつまで揺さぶっているつもりなのだろうか。
 もう起きてるってのと心の中で愚痴ると、ふと先程の声に聞き覚えがありすぎる事に気付く。

「……フェイト?」
「何かな、ジンゴ?」
「……いや、携帯ありがと。なのは、もう起きてるから降りてくれ」
「はーい」

 やれやれと身体を起こし、時間をチェックする。
 九時五五分、とりあえず約五時間は眠れたらしい。
 だが残念な事にこの身体は未だ小学生、大量の睡眠時間を必要とするのだ。

「……眠い」

 意思に反して瞼が落ちる。
 いや、ある意味で意思に反していないのだが、とりあえず落ちる。
 座ったままふらーっと倒れようとした身体を、誰かが支えてくれた。

「もう、ジンゴ君! 起きようよ」
「なのは、ジンゴ疲れてるみたいだから……」
「でも折角はやてちゃんの家に行くのに……」

 おや、とその言葉に反応して脳が覚醒する。
 八神家に関する処理は主にクロとリン姉がやっているので、俺の所にはあまり情報が来ていないのだ。
 ぱちりと目を開くと、支えてくれていたフェイトに礼をいい、なのはを見る。

「はやて、帰ってきてんのか?」
「あれ、ジンゴ君知らなかったの?
 ヴィータちゃん達はもう少し時間がかかるけど、はやてちゃんはこれから帰れるって半頃に電話あったよ」
「それで一緒にお昼にしないかって。一〇時半に待ち合わせ」
「って、そろそろ出ないとまずいじゃねえか!?」
「だから起こしたんだよお」

 ぷくっと膨れるなのはに謝りながら私服を引っ張り出す。
 よく見たら執務官服のままだったのだ。
 まあ管理局の制服の中では比較的地球の街中で着ていても問題ない格好ではあるが、それでもこれで海鳴を歩いてきたと言う事は余程俺も眠かったのだろう。
 なのはがこのギリギリまで起こさなかったのは、昨日──と言うよりも今日だが──遅かった俺を出来る限り休ませてあげようと言う配慮だったのだろうが、できればあと一〇分早く起こしてもらいたかった。
 さっさと上着を着替え、ズボンに手を掛けた所ではたと重要な事を思い出す。

「で、お嬢さん方。いつまで俺の着替えを見てらっしゃるんでしょう?」
「ごっ、ごめん! すぐ出てくからっ」
「ジンゴ君がいきなり脱ぎ始めるのがいけないんだよお」

 フェイトはともかくなのはは何やら捨て台詞を残して出て行く。
 まあ、二人共頬っぺたは赤かったのだが。

 つか小学生だし、別に見られてもそこまで気にしねえけどな、俺は。

 一応、彼女達への配慮として言ったつもりだったのだが、あの様子を見るとやぶ蛇だったかもしれない。
 まあなのはにも羞恥心って物が出てきたようでなによりと自分を納得させる。
 シャツの上からジャンパーを羽織り、部屋を出た。

「お待たせ」
「あ、ジンゴ、寝癖ついてる」
「マジで? どこについてる?」
「この辺。あっと、もうちょっと前。ああっ、もういいよ、ジンゴ君しゃがんで」

 寝癖のせいで出発が五分遅れました。




 スーパーに寄ってから八神家に向かう道すがら、携帯に着信が入る。
 そろそろこのパターンも慣れてきたなと思いながらもメールボックスを開いた。

 やれやれ、また厄介事じゃなきゃいいんだけど。

 ちなみにここで言う厄介事にはばあちゃんの悪戯も含む。
 むしろ突発的な任務よりも、ばあちゃんの悪戯の方が厄介だ。
 内心腰が引けながらも中身を確認すると、意外な事に──こう表現されてしまう組織のお偉いさんってどうなんだろう?──まともな内容だった。

「ジンゴ君、メール誰から?」
「ん、ばあちゃんからだ」
「そ……そう。大丈夫?」
「今回はまともな事務連絡だけだから大丈夫だ」
「よ、よかったあ」

 心底安堵したと言った様子のなのはに、フェイトが首を傾げている。

 ああそっか、フェイトはまだ知らないんだっけな。

「ねえジンゴ。おばあさんからのメールでなんでそんなに緊張したの?」
「フェイト──」

 がっつりとフェイトの両肩を掴み真剣に彼女を見詰める。
 対するフェイトは少しだけ頬を染めながらも、突然俺の雰囲気が変わった事に戸惑いを見せ、

「──聞くな」
「……フェイトちゃん、世の中には知らなくていい事もあるんだよ」
「そ、そうなんだ……なんだか大変そうだね、ジンゴ」

 俺の言葉にやたら哀愁が漂っていたせいだろう。
 なのはがフォローに入り、彼女は引き攣った顔で頷いた。
 それを見て本題を思い出し、一つ咳払いをしてから仕切りなおす。

「ま、今回のはお前等に関する事だぞ」
「ほえ? 私達?」
「ああ、なのはもフェイトも局の仕事を続ける事になっただろ。
 正式局員になるならないはともかくとして、一度訓練学校に行ってもらうって話、聞いてないか?」
「うん。けど私達はこっちの学校の事もあるから速成コースでって聞いてるよ」
「おう。でもまあ速成コースでも三ヶ月かかるからな。
 なるべく学校を休まないようにするなら春休みを挟んだ方がいいだろ?」
「そっかあ。それで、いつからなのかな?」
「期間は二月から四月の三ヶ月間。場所は……うわ、マジで!?」

 ばあちゃんが嬉々として書類を作っている所が目に浮かぶ。
 俺の時はここまで手を回してくれなかったのになあと嘆息すると、なのは達がそれはもう不安そうに俺へ注目していた。

「何かまずい事があったの、ジンゴ?」
「もしかして……大変そうな場所なのかな?」

 あー、まあ、今の俺の反応だとそうなるか。

 がりがりと気まずい思いをしながら頭をかいて、まずはフェイトの言葉を否定する。

「別にトラブルってわけでも、場所が魔窟ってわけでもない。
 まあわかりづらかったとは思うが、俺としちゃどっちかと言や羨ましいな。
 あと、なのはの大変そうな場所ってのはある意味あってる」

 よく分からないと首を捻る二人に苦笑。
 まあ行けば意味を理解すると思うので、あえて説明しようとは思わない。

「場所は時空管理局第四陸士訓練校。校長はファーン・コラード三佐。
 ついてるぜ、お前等。俺の知る中で、ここは最高の訓練校だ」
「ホント!?」
「ああ。速成コースとは言えここを卒業したら、とりあえず魔導師としてのレベルは上がるな」
「ジンゴがそこまで言うなんて……凄いね」

 フェイトの中で俺のイメージがどうなっているのか、小一時間位問いただしたい。
 それはともかく、これだけでばあちゃんがどれだけこいつ等に入れ込んでるかがわかるってなもんだ。
 足長おじさんならぬ、足長ばあさんにでもなるつもりかねえ。
 実際の身長は低いくせに。

 そんな事を考えながら、よかったねと目の前ではしゃぐ二人を見る。

 ま、役得だな、これは。

 嬉しそうな彼女達になんとなく満足感を覚えながら頬が緩むのを自覚する。
 コラード三佐にもまれた後の彼女達が、どんな風に成長して帰ってくるのかが楽しみだと一人ごちた。

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