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リリカルなのは二次小説中心。 魂の唄無印話完結。現在A'sの事後処理中。 異邦人A'sまで完結しました。
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「以上が今までの報告になります」
『そう、ご苦労様。楽にしていいわよ』

 そう言って画面の中の彼女は目を細めた。
 厳しくも凛とした雰囲気は霧散し、柔和な表情になる。
 それを見て俺も服を崩して楽な体制を取った。

『それにしても、休暇中だと言うのにちっとも休んでないのね、あなた』
「そうでもない。
 地球に来てからはちょくちょく手伝いに入ってるけど、その前は訓練以外の時間はのんびりしてたからね。
 三ヶ月まるっと休んだよ」
『訓練のしすぎも身体に悪いのよ』
「わかってるって」

 苦笑いする俺をいかにも信用できませんと言った目で見てくるばあちゃんにへらりと手を振る。

 俺としてはもっと訓練したいんだけどなあ。
 今丁度行き詰ってる所だし。
 まあ、いかんせん身体がついてこないし、仕方ない。

『……はあ、まあ分かっているのならいいのだけど。
 それにしても複雑な気分だわ』
「何が?」
『式守家とあなたの関係を知らなかったのは過ぎた事だからもう言わないけど……あの事件はまだ終わってないのね』
「みたいだね。お袋もちょっと思いつめてたみたいだし……」
『御薙が中心に関わっている限り姓は戻せない、か。
 私は嬉しいけど、お母さんは複雑でしょうね』
「俺としては家名にあんま思い入れもないし、別にどっちでも構わないんだけどね」

 それに俺の容姿の事もある。
 日本名を名乗ると、どうしても式守の関係者だと分かってしまう。
 それを考えれば、このままの方が居心地はいいのかもしれない。

 ふと、ばあちゃんの表情が悪戯っぽくなった。
 頭の中で警鐘が鳴り響く。

 ……すっげえ嫌な予感がする。

『ねえ、ジンゴ。あなた、学校通ってみない?』
「はあ!?」

 もう第一線で働いてるのに今更学校!?

『よく考えなくてもあなたまともに学校通ってないじゃない。
 訓練校も速成コースだったし』
「いやまあ、そうだけど」
『意味がない、とでも言いたそうね。
 少しは子供らしい事をしてみたいとかないのかしら』
「……めんどい」
『あなたねえ……』

 全力で呆れた顔をされてしまった。

『そちらの戸籍も復活したわけだし、ある程度局の方でも学歴操作はできるけどあるに越した事はないわよ?』
「まあ、そうかもしれないけど……」
『長期任務は外そうと思えば外せるし。どうかしら?』

 学校、ねえ。
 かったるいとしか言いようがないんだが。
 俺くらいの年齢って初等教育だろ?

『……不満そうね』
「そりゃ、まあ」
『そう。……じゃあ任務にしちゃいましょ』
「は?」
『なのはさん、だったかしら。現地の民間協力者は。
 将来有望なんでしょう? 彼女を護るのがジンゴの任務』
「って、ちょっ、ばあちゃん、それ職権乱用!!
 しかもなのはは民間協力者であって局員じゃないんだぞ!?
 更に言や執務官の仕事でもねえだろ!」
『はい、決定。辞令出しておくわね』
「話聞けよ!」

 うきうきと言葉が見えそうな動きで、何やら書類に書き込もうとしていた彼女を止める。
 が、にやりとした笑みが返された。

『残念、もう送ってしまったわ。今事務に受理された所よ』
「うあ……最悪」

 マジかよ、ばあちゃん……

『学校内での護衛も任務の内だから』
「おーぼーだあっ!!」
『私上司、あなた部下。諦めて通いなさいな』
「……………………はぁ」

 がっくりと肩を落とす。
 海鳴での任務と言えないような長期任務が、たった今決定した。

「ったく、住むとことかどうすんだよ。部屋準備してくれんの?」
『まあ、それでも構わないけど……そうね、高町さんの家とかどうかしら?』
「ってまたシロさん達に迷惑かけんのかよ!?
 うーあー、あの人達ならほんと気軽にOK出しそうでやだなあ」
『駄目そうだったら言いなさい。マンションの一室くらい用意するわ。
 あと許可をいただけ場合は私に通信しなさい。私からもご挨拶させてもらうわ』

 俺は大きく溜息をつきながら言葉を搾り出す。

「ばあちゃんって、ある意味最強……」
『当然よ!』

 胸張って威張らないでくれ、今のは厭味なんだから。

 通信を切る直前になって、本題を忘れていた事を思い出した。

「あ、いけね。忘れてた」
『?』
「事務の方に俺の休暇取り下げ、伝えておいて」
『確かに、その状況なら仕方ないわね。やっておくわ。
 …………また事務局員が泣くかしら?』
「三ヶ月も休んだんだから大丈夫じゃね。
 しばらくは労働組合も大人しいっしょ」
「だといいのだけど……」

 ばあちゃんが心底嫌そうに端末を操作するのが見え、次いで受理されたわよと言われる。

 ああ、近いうち事務に何か差し入れでも持っていこう。

 事務の若い局員の泣き顔がふと思い浮かんだので、そんな事を思った。
 なんにせよ、これでようやく表立ってアースラに協力する事ができるなと安堵の息をつこうとした所で、

『ただし、今日まで休暇にしておいたからね。
 今日一日はしっかり休みなさい』
「むう……了解」

 最後の最後、釘を刺される。
 不承不承返事を返すと本局との通信を終えた。

 ああ、なんか、下手な任務よりも疲れたかも。

 ぐったりとコンソールに身体を預けてしまったのも、仕方のない事だと思う。




「──と言うわけなんだけど」
「護衛か……。
 今事件に関わっているのは分かるが、それが必要な立場なのか、なのはは?」
「んなわけないじゃん。
 まあ才能はかなりのもんっぽいから入局を勧められるかもしれないけど。
 実際は単にばあちゃんが俺を学校に通わせようとしてるだけだって」

 疲れきった顔で言うと、シロさんがふむと頷いた。

 あー、言われる事想像ついたわ。
 ま、もう諦めてるからいいけどさ。

「そのクローベルさんの話には俺も賛成だな。
 勉強はともかく、同年代の子達と触れ合う機会はあった方がいい」
「ま、そう来るとは思ってたけど。
 ……幼い恭さんを連れ回してたって言う人の言葉じゃないよね」
「言うな。反省はしてるんだから」

 そうシロさんは罰の悪そうな顔をする。

「それで、住む所、か」
「そ。通う学校は、一応護衛任務って事になってるからなのはと同じとこ。えっと、私立の……」
「聖祥大附属小学校な」
「ああ、そうそう、そこになるんだけどね。
 ま、都合が悪けりゃばあちゃんが近場に部屋用意してくれる事になってるから」
「いいぞ、うちに住んでも」
「早っ!?」

 即答だったぞ、今の。

「ちょ、桃ちゃんとか、他の皆に確認取らなくていいのかよ?」
「桃子ー」
「了承」

 またしても早っ!?

 厨房の奥から桃ちゃんがケーキを持ってきて、ガラスケースに入れる。
 今更だが、ここは翠屋の店内だ。
 平日の午前中だから客も少なく、俺自身が訳ありの子供に見られているのか突っ込みを入れてくる常連客はいない。

「恭也はガッツポーズする程喜ぶと思うし、美由希も弟が欲しいって言ってたから大丈夫だろ」
「あー、ユーノじゃ駄目なのか?」

 確かみーちゃんはユーノの正体を知った時、『金髪少年ひゃっほー!』って感じのノリだったが。

「あいつは俺が認めん」
「さいで」

 そう言や親馬鹿だったな、シロさん。
 俺の前でそう言う素振り見せないから忘れてた。
 って言うか、まだユーノがなのは達と風呂に入った事根に持ってたんだ……
 九歳はギリギリセーフだと思うけどなあ。
 あいつ等、誕生日まだのはずだから、正確に言や八歳だし。

 なお、現在ユーノは高町の家で待機中である。
 こっちに来た時、なぜかフェレットモードになっていたのでそれについて突っ込みを入れた所、『こっちの方が楽なんだ』と返されてしまい閉口した。

 あいつ、その内フェレットが真の姿になるんじゃなかろうか。
 ……ありえそうで笑えん。

「それになのはの近くに男の子がいれば、恥じらいなんかも出てくるようになるだろうし」

 と、シロさんの言葉で我に返る。

「ちょい待て。それこそユーノでいいじゃんか」
「…………どうも男として認識してないみたいなんだ」
「ユーノ……」

 やべ、ちょっと涙出てきた。
 気になる異性に男として認識されてないって、初恋が散る王道パターンだな、おい。

「まあ、出会いが出会いだったみたいだし」
「あー、そう言やアースラに来るまで完全にフェレットだと思い込んでたな。
 って事は最初に教えなかったユーノの自業自得か」

 シロさんの苦笑いに釣られるように苦笑を返す。
 しばらく笑い合っていると俄かにシロさんの顔が真剣なものになった。

「ま、そう言う事情を抜きにしても、刃護にはうちにいてもらいたいよ。
 お前はもっと子供であるべきだ」
「シロさん……」
「そうせざるを得なかったのは分かるさ。仕方ないとも思う。
 でもな、子供でいられる間は子供でいてもいいんじゃないか?」
「そうね、私も士郎さんと同意見。
 ねえ刃護君、知ってる? あなたまだ一〇歳なのよ」
「そりゃ、まあ」

 自分の年齢だし。
 そう言う事言ってるわけじゃないんだろうけど。

「あなたを見てるとね、前みたいに不意にいなくなってしまいそうで怖いの。
 ずっとなんて言わないわ。
 少しの間でいいから、私達の息子になってくれないかしら?」

 それは酷く優しい誘いだった。
 言葉と共に目の前に置かれたのはミートソースのパスタ皿。
 ふと時計を見るともう昼時で。
 彼女のふわりとした笑顔を見ながら一つ、深呼吸をした。

「なのはが……」
「うん」
「任務、なのはが小学校を卒業するまでなんだ。
 だから……今年を入れて、あと四年間…………お世話になります」

 そうして俺は深々と頭を下げ、顔を上げる。
 シロさんも桃ちゃんも笑ってた。
 ……ついでに常連のおばちゃん達も。

 うわっ、恥ずっ。
 って言うかおばちゃん、そんな微笑ましいものを見るような目で見ないでーー!!

「何があったかは分からないけど、話がまとまったみたいで良かったねえ」

 よかった、内容は聞かれてない。
 でもその目はやめてくれないか、おばちゃんA。

「つまりなんだい? この子はマスターの家の子になるのかい?」

 おばちゃんB、別に養子入りするわけじゃないって。
 単なる居候だよ。

「ええ、お試し期間なの。
 ここで気に入ってくれれば将来本格的に婿養子に──」
「って、ちょい待て桃ちゃん!!」

 なんだそのとんでも設定!?
 聞いたことないぞ!!

「あらあら、じゃあこの子が翠屋の二代目マスターになるんだね」

 俺の言葉はスルーですか、おばちゃんC。

 ちなみにおばちゃんDもいる。
 さっきからげらげら笑い転げているだけだが。
 彼女等は開店からずっとテーブル席を占領し続けている猛者だ。
 毎週一度は翠屋に集まるようにしているらしい。
 ……どうでもいい情報だな。

 このカオスから誰か助け出してくれ、と信じてもいない神に祈っていると、

【ユーノ君! ジンゴ君!】

 なのはからの念話が入った。

 やべえ、今なのはが女神に見えるよ……目視できないけど。

 視線をシロさんに送るとバックヤードを指差される。

 聞こえるはずないから、俺の雰囲気で読み取ったのか。
 流石だな、シロさん。

 急ぎ移動したバックヤードでなのはの話を詳しく聞き、店を出た。
 目的地はバニングス邸。
 目的は……彼女の、フェイト・テスタロッサの使い魔────アルフだ。




 一足先にバニングス邸に着いた俺は、アースラのクロ達に映像を送るべくサーチャーを撒いた。
 その後、どこに隠れてようかと考え、無難に庭の樹の上に潜む。

 気配絶っときゃ、気付かないだろ。
 あの鮫島って執事はちょい危ないが。

 ここに侵入した時、一瞬だけ漏れた気配を察知して見せたのだ、あの執事は。

 あなどれんな、日本の執事……

 そんなどうでもいい事を考えながら、サーチャーの映像をアースラに送り始めた頃、なのは達が到着した。

 あ、ユーノ、肩に乗ってやがる。
 どうやって合流したんだろ?
 なのはは制服のままだから学校から直接来たって事だよな……

 庭にやってきたなのはが、オレンジ色の大狼が入れられたケージの前にしゃがみ込んだ。

【……やっぱり、アルフさん】
【あんたか……】

 なのはの念話にやはり念話で、しかし疲れ果てた声をアルフは返した。

【その怪我、どうしたんですか? それにフェイトちゃんは……?】
【……】

 無言で背を向ける彼女に、金髪の気の強そうな女の子──なのは情報から考えれば、今日のホストであるアリサ・バニングスだろう──が心配そうな声を出す。

「あらら、元気なくなっちゃった。どうした? 大丈夫?」
「傷が痛むのかも……そっとしておいてあげようか……」
「うん」

 紫の髪の大人しめの子──消去法で月村すずかと分かる──の言葉になのはが頷くと、その肩からユーノが飛び降りた。
 そのままユーノはケージの中に入って行ってしまう。

「ユーノ!? こら、危ないぞ」
「大丈夫だよ、ユーノ君は」

 なのはがアリサを宥めるとアリサは渋々頷き、二人を促し移動を始める。

【なのは、彼女からはボクが話を聞いておくから、なのははアリサちゃん達と】
【うん……】
【そうそう、楽しんできな。俺もいる事だしよ】
【ふえっ!? ジンゴ君!?】
【ジンゴ、いたの!?】
【お前等が来るちょっと前からな。
 大体連絡もらったんだからちゃんと来るって】

 お前等から見てどんだけ薄情な人間なんだ、俺?

【ぜ……全然気付かなかった】
【なのはに気付かれるようなら俺は執務官やめてるよ。
 ほれ、きょろきょろしてないで行け。
 ここ、勘の鋭い人がいるから、あんま目立ちたくねえんだ】

 なのはが微かに頷き、アリサ達と共に去って行くのを見送ってから地面に降りる。

「よ!」
「ほ、ほんとにいた……」
「そりゃいるさ。ユーノ、とりあえず人払い」
「あ、うん」

 防音と人払いの結界が張られるのを確認してからケージに近付いた。

「ほれ、こっち来い。あんま巧くねえけど治療かけてやっから」
「あ、じゃあボクも」

 ケージの枠ギリギリまで寄ってきたアルフに下手くそな治癒魔法をかけ始める。

 おおう、ユーノ凄え。
 そう言や補助系の結界魔導師だったか。

「いったいどうしたの? 君達の間で、いったい何が……?」

 ユーノが疑問を投げかけると、アルフはふと俺を見た。

「俺は今休暇中でな。緊急時じゃないと出動できないんだ」

 今の俺は局員じゃありませんよー、とアピールしてみる。

【でもあんたがいるって事は、管理局の連中も見てるんだろう?】
【……ご明察。さっき俺がサーチャー撒いたからな。映像もばっちり届いてるぜ】
【時空管理局、クロノ・ハラオウンだ。……どうも事情が深そうだ。
 正直に話してくれれば悪いようにはしない。
 君の事も、君の主、フェイト・テスタロッサの事も】
【話すよ、全部。だけど約束して、『フェイトを助ける』って。
 あの子は何も悪くないんだよ】

 いい使い魔だ。
 情が深く、何より主人の事を大切にしている。
 こいつを見るだけで、主人の人格が分かるってもんだ。

【約束する……】

 ん? クロの念話に小さくてもノイズ入るなんて珍しいな。
 あれか、エイミィとやり取りでもして録音してるのか?
 まあ後々裁判とかもあるだろうし、証言は貴重、か。

【フェイトの母親、プレシア・テスタロッサが全ての始まりなんだ……】
 

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内海 トーヤ
性別:
男性
自己紹介:
ヘタレ物書き兼元ニート。
仕事の合間にぼちぼち書いてます。

其は紡がれし魂の唄
(なのはオリ主介入再構成)
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魂の唄ショートショート
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遥か遠くあの星に乗せて
(なのは使い魔モノ)
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異邦人は黄昏に舞う
(なのは×はぴねす!+BLEACH多重クロス再構成)
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