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リリカルなのは二次小説中心。 魂の唄無印話完結。現在A'sの事後処理中。 異邦人A'sまで完結しました。
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「ねえ、なのはとジンゴはあの人達の事どう思う?」

 アリサ達が帰った後、場所をなのはの部屋に移してしばらく、フェイトは唐突に切り出してきた。
 一瞬だけなんの事か分からずに俺は固まり、その間に思いついたのかなのはが口を開く。

「あの人達って……闇の書の?」
「うん、闇の書の守護騎士達の事」
「どう思うって言われてもなあ……」

 腕を組んでなのはを見遣ると、なのはは戸惑いながらも口を開いた。

「えと、私は急に襲い掛かられて、倒されない事で一杯一杯だったんだけど……フェイトちゃんはあの剣士の人と、ジンゴ君はあの赤い女の子と何か話してたよね?」
「うん、少し不思議な感じだった。
 上手く言えないけど、悪意みたいなのを全然感じなかったんだ」
「俺の方も似たような感じだったな。ただ……」
「ただ?」

 選手交代をする前のあいつ等とのやり取りを思い出す。
 どうも自分達の欲望の為に動いてるとか、主の欲望を叶える為に動いていると言う雰囲気ではなかった。
 誇り高いベルカの騎士が辻斬りめいた真似をしているにも関わらず、伝わってくるのは確かな後悔とそれを越える必死さ。
 そう、彼女達はずっと、必死だった。
 それが何に対してかは分からないが。

「あいつらが戦ってるのって俺達じゃなくてもっと別の何かだったんじゃないかって思うんだ」
「別の……」
「何か?」
「ああ。主に蒐集を命じられていやいややってるって感じにゃ見えなかった。
 多分自分達の意思で、あいつ等は戦場に立つ事を選んだんだと思う。
 そうだな……ちょっと例えはアレだけど、事件の時のフェイトと似たような印象を受けたよ」
「私と?」
「ああ。何か遣り遂げなきゃいけない事があって、それに必死になってる。そんなイメージだな」

 俺の言葉にフェイトの瞳が揺れる。
 かつての自分を思い出しているのだろう。
 もうちょっと話題を選ぶべきだったかと反省。
 そんな彼女の様子には気付かずに、なのはは深く溜息をついた。

「そっか……その何かを教えてもらえたらいいんだけど……
 話が出来そうな雰囲気じゃなかったもんね」
「あー……戦場での軽口程度は交わせるだろうけど……
 そう言う深い所まで教えてくれってのは難しそうだな」
「強い意志で自分を固めちゃうと、周りの声って入ってこないから。私も、そうだったしね」

 かつてを振り返るような二人の深い眼の色。
 フェイトが静かに言葉を紡ぎ、なのはが俯きがちにぼんやりと絨毯を見詰める。
 あの時、なのはは何度も繰り返しフェイトに呼びかけて、少しずつ歩み寄る事は出来てもそれを決定打には出来なかったと聞いている。
 正直、俺はそこまであの事件に関わりが深かったわけではないので、思い入れは彼女達ほどじゃない。
 特にフェイトは、事件の中枢にいたと言ってもいい立場なので、思う所が多いのだろう。
 本気で話の振り方しくったと考える俺の隣で、フェイトは言葉を続ける。

「私は母さんの為だったけど、傷付けられても間違ってるかもって思っても、疑っても……だけど絶対間違ってないって信じてた時は……信じようとしてた時は、誰の言葉も入ってこなかった」

 彼女の言葉にピッグツインがなのはの心を表現するかのように項垂れて。
 と、そこでようやくフェイトはなのはの顔に浮かぶ複雑な色合いに気付いたらしい。
 慌ててフォローを入れるかのように彼女は言葉を重ねた。

「あ、でも言葉をかけるのは、想いを伝えるのは絶対無駄じゃないよ。
 母さんの為だとか、自分の為だとか、あんなに信じようとしてた私もなのはの言葉で何度も揺れたから」

 フェイトのなのはを気遣う気持ちになのははほんの少しだけ笑顔を見せ、俺は上手く言葉を見つけられなかったので、ぽんぽんと無言で彼女の頭を撫でた。
 流れるのはどことなく暖かい空気。
 何気なく三人で顔を見合わせて、笑う。

「言葉を伝えるのに戦って勝つことが必要なら……
 それなら、迷わずに戦える気がするんだ」
「「フェイト(ちゃん)……」」
「なのはが、教えてくれたんだよ。そんな強い心を」

 そうして彼女はふわりと微笑んだ。
 それになのはは照れながらも、恥ずかしそうに謙遜の言葉を口にして。

「そ、そんな事、ないと思うけど……」
「そうか? 俺達三人の中じゃ、なのはが一番心が強いと思うけど」
「にゃ!? ジンゴ君まで」
「ふふ……それに、ジンゴも」
「俺?」

 なのはをからかう体勢に入った途端、フェイトからの意外な言葉が飛んでくる。

「ジンゴが、教えてくれたんだよ。私は私なんだって。
 だから私は迷わず私の意思で歩いていける」
「いや、それはアリシアの手柄だろ」
「そうだね。きっとそれもあるけど……きっかけはジンゴのくれた言葉だったから」
「んな事ねえって。きっと俺がいなくても、フェイトは自分で立ち上がれただろうさ」

 頬が熱くなるのを自覚しながらガリガリ頭を掻く。
 言葉は紛れもない俺の本心だ。
 だからたまに思う。
 もしかしたら俺は、物凄くお節介な野郎なんじゃないかって。

「ジンゴ君、照れてる?」
「照れてねえよ」
「ふふ……ジンゴ、可愛い」
「か……可愛い」

 思わず両手を床について凹んでしまった。
 この年になって年下から言われるとダメージがでかすぎる。
 とは言っても周りの人間は子供が生言ってんじゃねえとか言いそうだけど。
 それなりに精神が成熟している身としてはかなりつらい。

「あれ? なんか私変な事言ったかな?」
「ううん、全然」

 首を捻る二人にはもう渇いた笑いしか出てこなくて。
 俺の声に釣られるように何故か二人とも笑い出し、部屋には一時笑い声が溢れる。
 全員が少し落ち着いた所でふいにフェイトが真剣な表情になった。

「なのは、ジンゴ、私強くなるよ。想いを貫く為に」
「そうだね、私ももっと強くなる。一緒に頑張ろう、フェイトちゃん。
 ……さし当たっては、ジンゴ君に勝てるくらいに」
「うん、頑張ろう、なのは」
「って、二人とも、そこで何故俺の名前が出る?」

 仲間外れかよと言う突っ込みは飲み込んだ。
 そんな当たり前の俺の疑問に、二人はきょとんとした顔を俺に向ける。

「だって、私達の周りで私達より強いって」
「クロノかジンゴ、だよね。クロノも強いけどあの人達とは戦闘スタイルが違うし。
 何よりジンゴ、あの人達二人を相手にして引けを取らなかったから、ジンゴくらい強くなればあの人達を相手にしても大丈夫になるよ」
「俺、まだ修行中の身なんだが……」
「それでも私達より強いもん。ね、フェイトちゃん」

 ねー、と楽しそうに顔を見合わせる二人を見てからかわれている事に気付いた。

 ま、二人とも表情が明るくなったし、乗っとくか。

「俺、仮想敵かよ……」

 がっくりと手を床につく俺に慌てて二人がフォローに来る。
 それににやりと笑い返してやると、今のは冗談だったと気付いたらしい。
 少し膨れっ面の二人に突っつかれながらも俺は笑った。
 つかの間の戦士達の休息、こんな日々がずっと続く事などないと知っていたから。
 結局俺は戦い続ける人間だと、知っているから。
 だから、後悔など一片たりともしないように、笑った。




「あ、もうこんな時間」
「ほんとだ。フェイトちゃんはもう帰んなきゃまずいよね?」
「うん、クロノからも言われてるし」

 フェイトの発言を聞いて思い出し、彼女を呼び止める。
 振り向いたフェイトに右手の人差し指からロブトールを引き抜くと渡した。
 彼女は手の平に乗せられた銀の指輪をまじまじと見詰めると首を捻る。

「これってジンゴのデバイスじゃないの?」
「ああ、ロブトールってんだ。
 エイミィと相談して本局技術部、つまり今お前等のデバイスを修理している所に預ける事になった」
「えっと……」
「なんで? ジンゴ君のデバイスは壊れてないよね?」
「ロブトールは頑丈だしな、不具合も全然起きてねえよ。
 まあどうして預けるのかってのは二人の相棒が帰ってきてからのお楽しみって事で。
 とりあえずエイミィに渡してくれればいいから」
「うん、わかった。帰ったらすぐに渡すよ」
「おう、頼んだ」

 彼女を見送る為玄関へ。
 外に出て手を振ると、フェイトも何度も手を振ってから帰っていった。
 なんとなく、もう彼女の姿も見えなくなった茜色の街を眺めて。
 隣のなのはも付き合ってくれてるのか黙っていてくれた。
 右の人差し指が何やらスースーする。
 違和感を感じて指を擦っていると、

「寂しい?」
「まあ……ちょっとな。この五年間、ここが定位置だったからなんか変な感じだ」
「にゃはは、そうだよね。私もレイジングハートがいないとちょっと変な感じ。
 まだ一緒にいるようになってから、そんなに時間は経ってないのにね」
「それだけこの九ヶ月が濃かったって事だろ。相棒になるのに時間は関係ねえさ」
「そっか、そうだよね」

 納得したように頷くと、なのははいつも彼女の相棒がいる場所、胸元に手を当てて嬉しそうに笑う。
 それに俺も微笑み返して、

「お?」
「え? ……あ」

 顔を上げた瞬間、鞄を担いだ恭さんと眼が合った。
 どうやら大学の方はもう終わりだったらしい。
 と言うよりかまともに通ってたんだと思ってしまったのは内緒だ。

 ところで、海鳴大学自体、妙に休講とかが多いような気がするのは気のせいだろうか。
 いや、気のせいだと思いたい。
 きっと恭さんが通ってないだけ……それも駄目か。
 あれで単位がまともに出ているのだから不思議過ぎる。

「お帰りなさい、お兄ちゃん」
「お帰り、恭さん」
「ああ、ただいま、二人とも。フェイトちゃん、来てたみたいだな」
「会ったの?」
「すぐそこですれ違った。ジンゴ、この後鍛錬するけど来るか?」

 こうして恭さんが鍛錬への参加の有無を聞いてくるのは珍しい。
 ここの所俺が負傷してたせいで、参加していなかった為だろう。
 軽くその場で伸びをして、各関節部を動かしてみる。
 違和感は特になさそうだ。

「うん、そろそろ大丈夫だと思うから今日から参加するよ」
「そうか。じゃあ後で道場でな」
「あ、お兄ちゃん」

 と、軽く手を振って家に入ろうとした恭さんをなのはが呼び止めた。

「私も参加していいかな? 邪魔にならないように道場の端っこにいるから」
「いや、なのはを邪魔なんて思うわけがないだろう。構わないが、珍しいな」
「あー、なのは、有限実行ってやつか?」
「うん!」

 元気一杯に返事をするなのはに俺と恭さんは少しだけ頬を緩めてから家に入った。
 とりあえずその後に続いた、ジンゴ君には負けないからね! と言う彼女の言葉は聞かなかった事に。
 隣を歩く恭さんの、お前一体何をやった? と言う視線が酷く痛かった。
 

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内海 トーヤ
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ヘタレ物書き兼元ニート。
仕事の合間にぼちぼち書いてます。

其は紡がれし魂の唄
(なのはオリ主介入再構成)
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遥か遠くあの星に乗せて
(なのは使い魔モノ)
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異邦人は黄昏に舞う
(なのは×はぴねす!+BLEACH多重クロス再構成)
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