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「次元震停止します。断層発生はありません」
「了解」
「第3船速で離脱。巡航航路に戻ります」
艦長席の隣で、俺は深く安堵の息をついた。
それに気付いたリン姉が俺を見る。
「お疲れ様、アラン君」
「リン姉もな。速度を求められてたのに到着が遅れてすまなかった」
「そう言えば何をしていたの?」
「そうだな……なんて言やあいいんだろうな……」
考えながら手の中のチップをもてあそぶ。
渡すタイミングが難しいよな、これ。
「そう……遺言を、受け取ってた、かな?」
「遺言?」
「ああ」
医務室のドアをくぐると、丁度フェイト嬢の今後についての説明がクロノからされていた。
「――アルフと一緒に護送室。
彼女はこの事件の重要参考人だからね。申し訳ないがしばらく隔離になる」
「そんなっ」
って、治療中にいきなり立とうとしたら。
「あいたっ」
「なのはっ、じっとしてて」
「……うん」
案の定包帯を巻いてくれていたユーノに怒られたなのはは、しょんぼりと肩を落とした。
ユーノは器用にくるくると包帯を巻いていく。
この程度なら治癒魔法をかけるよりも自然治癒させた方がいいと言う判断だろう。
「今回の事件は1歩間違えれば次元断層さえ引き起こしかねなかった重大な事件なんだ。
時空管理局としては関係者の処遇には慎重にならざるを得ない。それはわかるね?」
「……うん」
沈んでいるなのはの顔をずっと見ているのもアレだと思うし、いい加減誰も俺に気付いてくれないので、入り口付近の壁を軽くノック。
全員が弾かれたようにこちらを向いたので、思わず1歩後退してしまった。
「お兄ちゃん!」
「先生!」
「「アランさん!」」
「いやはや、大歓迎だな、おい。
それとクロノ、真面目な話をしてる所悪いがそれじゃ台無しだぜ」
ちょいちょいとクロノの頭を指差す。
先程までエイミィが包帯を巻いていたのだが、その留め方がリボン結びになっていた。
これではどんなシリアスな話も妙にコミカルに見えてしまう事だろう。
「エイミィ!」
「ちぇーっ。アランさん、ばらすの早いですよ」
「いや、このタイミングが一番空気壊れるだろ。
何はともあれ、エイミィグッジョブ!」
グッと親指を立てるとエイミィもサムズアップで返してくれる。
頷き合った後、未だ俯きがちな妹の頭に手を置いた。
それに反応してなのはが顔を上げる。
「そんなに沈むな」
「でも……」
「大丈夫さ。な、クロノ」
包帯を巻き直したクロノに話を振ると、彼は真っ赤になっていた顔を引き締め頷く。
そこにいるのは年相応の子供ではなく、時空管理局の執務官だった。
「事情があったとはいえ、彼女が次元干渉犯罪の一端を担っていたのは紛れもない事実だ」
「……」
「重罪だからね。数百年以上の幽閉が普通なんだが──」
「そんなっ!?」
立ち上がろうとしたなのはの肩を抑える。
「ちゃんと最後まで聞きなさい」
「……はい」
「まあ状況が特殊だし、彼女が自らの意思で次元犯罪に加担していなかった事もはっきりしている」
そう、その為にも俺は口を噤んだのだから。
あれ以上の事を口にしても、彼女を止められたとは思えないが。
「あとは、偉い人達にその事実をどう理解させるかなんだけど……」
「その辺りはお前の仕事、だろ? クロノ・ハラオウン執務官殿」
「先生、からかわないでくださいよ!
……まあ、その辺にはちょっと自信がある。心配しなくていいよ」
「クロノ君……」
ぽかんと呆けた顔でなのははクロノを見た。
それにクロノは僅かに微笑むと続ける。
「何も知らされず、ただ母親の願いを叶える為に一生懸命だった子を罪に問う程、次元管理局は冷徹な集団じゃないから」
そう、少なくとも彼等現場の人間は、世界の悲しみを少しでも減らそうと局で働いているのだから。
ぴょこんとなのはのツインテールが跳ねる。
このツインは一種、この子の感情の指標だ。
ああ、やっと笑顔が帰って来たか。
「クロノ君って、もしかしてすっごく優しい?」
「なっ!?」
あ、クロノが瞬間沸騰した。
この初心っ子め。
ストレートな褒め言葉に弱すぎだろ。
それにしてもなのはのこの天然っぷりは……ま、かわいいから今しばらくはこのままでいっか。
放っとくと際限なく周りの男を落としていきそうな気もするけどな。
「し、執務官として、当然の発言だ。私情は別に、は、入ってない!」
「にゃはは、別に照れなくていいのに」
「て、照れてないっ!」
「照れてるよな、エイミィ」
「照れてますねえ」
「先生っ、エイミィッ!!」
ニヤニヤしながら皆でクロノをからかう。
笑いながら、フェイト嬢も早くこの輪の中に入れるようになればいい、そう思った。
あれから、俺達は次元震の余波が治まるまでアースラで世話になる事になった。
途中、民間協力者の俺達3名には感謝状が贈られるというイベントもあったが、概ね何事もなく過ごしている。
フェイト嬢は隔離状態なので、未だ会えていない。
なのはは何も言わないが、どうやらそれが気がかりのようだ。
「次元震の余波はもうすぐ治まるわ。
ここからアラン君達の世界になら、明日には戻れると思う」
「そうか」
「よかった」
「ただ、ミッドチルダ方面の航路はまだ安定しないの。しばらく時間がかかるみたい」
「そうなんですか」
「数ヶ月か、半年か。安全な航行が出来るまで、それ位はかかりそうね」
「そうですか。その……まあ、うちの部族は遺跡を探して流浪している人ばっかりですから、急いで帰る必要もないと言えばないんですが。
でもその間ここにずっとお世話になるわけにもいかないし……」
あー、本当に律儀な奴だな。
仕方ない、助け船を出すか。
そう思って発言しようとした所で、なのはが先に口を開いた。
「じゃあうちにいればいいよ、今まで通りに。ね、お兄ちゃん?」
「え……いいの?」
「いいんじゃないか。
美由希は弟が出来たみたいで嬉しいっつってたし、母さんも楽しそうだったしな」
「だからユーノ君さえ良ければ」
「じゃあ、その、えっと……お世話になります」
「うん!」
満面の笑みを浮かべるなのはに、戸惑い気味のユーノ。
それを微笑ましげに見るリン姉。
ようやく、色々な事が落ち着きを見始めている。
それにしても、
気になるあの子と1つ屋根の下か。
青春だな、ユーノ。
【だから、おっさん臭いですって】
【うっせえ】
そんな話をしていたら、寝ぼけ眼のエイミィとそのエイミィに説教中のクロノが並んでやってきた。
リン姉は背中を向けているので気付いておらず、新たな話題を出す。
「あの人が目指してたアルハザードって場所、ユーノ君は知ってるわよね?」
むう、割と重要話題ではあるが、今の状況で話す事じゃなくないか、リン姉。
ちなみに今更ではあるが、ここは食堂で今は食事中、のはずである。
尤も、俺以外は誰もそんな事気にしてないのか、ユーノも普通にその話題に乗った。
「はい。聞いた事があります。
旧暦以前、前世紀に存在していた空間で、今はもう失われた秘術がいくつも眠る土地だって」
「だけど、とっくの昔に次元断層に落ちて滅んだって言われてる」
「どうもー」
補足したクロノとエイミィが食事を乗せたプレートを置きながら席に着く。
俺はなんとなく食欲が失せていくのを感じて、静かにスプーンを置いた。
「あらゆる魔法がその究極の姿に辿り着き、その力をもってすれば叶わぬ望みはないとされたアルハザードの秘術。
時間と空間を遡り過去さえ書き換える事が出来る魔法、失われた命をもう1度蘇らせる魔法、彼女はそれを求めたのね」
「はい」
「でも、魔法を学ぶ者なら誰もが知っている。
過去を遡る事も、死者を蘇らせる事も、決して出来ないって」
そう語るクロノの顔は渋い。
出来ないではなく、してはいけないのだと俺は思う。
そんな事をすれば、何もかもが嘘になってしまうから。
上手く言葉には出来ないけど、それでもしてはいけない、そう感じている。
「だから、その両方を望んだ彼女は御伽噺に等しいような伝承にしか頼れなかった。頼らざるを得なかったんだ」
「でも、あれだけの大魔導師が自分の命さえかけて探したのだから……
彼女はもしかして、本当に見つけたのかもしれないわ、アルハザードの道を。
今となっては、もうわからないけどね」
「……」
黙りこんだ面々を見ながら俺は口を開いた。
脳裏に浮かんだのは、薄汚れた彼女の研究室。
「アルハザードはあるさ、恐らくな」
「!?」
「何か知っているの?」
リン姉の視線が俺を貫く。
俺は臆す事なく、知ってる事のみを述べる。
「ああ、寄り道した先は彼女の研究室でな。彼女の……シアの日記を見つけた」
「寄り道……そう言えば先行していた割には、ボクと同時位に着いてましたね」
「お兄ちゃん、なんで寄り道なんか──」
「じき、わかる」
当然の疑問に答える事なく、ただ笑いかける事で答えた。
それから対面に座るリン姉達に頭を下げる。
「データは持ってきてない。
彼女の事も、アーシャの事も、フェイト嬢の事も、これ以上曝されたくないだろうと思ったから。
すまんな。本当ならあった方が事件の真相に早く辿り着けるだろうに」
「……仕方ないわね、もう終わってしまった事だし。それで、日記にはなんと?」
「アルハザードの遺児に会った、と」
驚愕で空気が凍りつく。
無理もない。
それだけアルハザードと言うのは眉唾物の話なのだ。
だけどそれにはまだ続きがある。
「彼女はそれから研究に没頭していった。
日付を確認したら、データで見た彼女が研究の方向性を変えた時期に一致したよ。
俺はてっきりアーシャを亡くした事が原因だと思ってたんだが……」
「アルハザードの遺児の影響の可能性が高いって事ね」
「ああ。つまりプロジェクトF、それ自体がアルハザードからのスピンオフ技術の可能性がある」
「そんな!?」
クロノがガタンと音を立てて立ち上がり、椅子が倒れる。
すぐに注目を集めてしまった事に気付き、誤魔化すように咳払いをして椅子を戻し、彼は着席した。
「まあ、アルハザードがちゃんとあると仮定したとしても、実際に虚数空間に行った所でアルハザードに辿り着けるかは疑問だがな」
「……そうね。あの中では魔法が使えない。つまり完全な運任せになるわ」
「あれ? でもお兄ちゃん脱出する時、虚数空間内で魔法使ってたよね?」
「ああ」
「「「「ええっ!?」」」」
そんなに驚かんでもいいのに。
「せっ、先生!? どう言う事ですか?」
「虚数空間って魔法が一切使えないんじゃ……」
「流石アランさん。非常識の塊だね」
「まだ何か隠してるのかしら?」
まあ隠し事と言うならそれこそ大量にあるが。
そんな内心を表に出すと色々と面倒そうなのでポーカーフェイスは保ったままに。
4人の様子に呆れながら俺はピンと指を立てて説明を始める。
「あのなあ……そもそも俺は経験者だぞ」
「経験者?」
あ、ユーノには詳しく説明した事がなかったか。
「俺は海鳴に流れ着く時、虚数空間から落ちてきてるからな。
あれについてならこの中で1番詳しいだろうよ。
百聞は一見に如かずってやつだ」
「落ちたら戻って来れないって言われてる所から出てきたお兄ちゃんは、大概非常識だと思うの。……あてっ」
とりあえずなのはにはでこピンをプレゼントしておく。
「海鳴に来た時の事はよく覚えてるぜ」
≪なにせ出た所が海鳴の上空2000mでしたからね≫
「セットアップしようとしたら、相棒がエラーが出たから始動キー入れ直せとか言うし」
≪体が縮んだせいでマスター認証が上手くいかなかったんです≫
「地面に着いたら着いたで体は痛いわ、魔力暴走は酷いわで」
≪瞬間的にセットアップできたのが奇跡のようでした≫
「しかも魔力暴走で体調最悪の所、なのはを助ける為に魔法を使ってなあ」
≪結局耐え切れずに、助けた後ぶっ倒れたんでしたね≫
「そうそう。ほんとあれきついよな。二度とやりたくないぜ」
「「そうか、そう言う事ね(事ですね)!」」
「え、ええ?」
「今ので分かったんですか、艦長」
流石にクロノとリン姉はこれだけのヒントでも分かったらしい。
頭がいい人を相手にすると皆まで説明せずに済むので話が早い。
「体の外部に放出された魔力は、虚数空間内では剥ぎ取られてしまい魔法行使が出来ない。
これは従来から言われている虚数空間の特性ね」
「だけど体内なら、体と言う殻が保護してくれるから魔力を取られる事はない。
虚数空間から出てきた後も魔力暴走が起こってたと言う先生の話からそれが推測できる。つまり……」
「そう、肉体強化だけなら可能なのさ。
虚数空間は魔法無効化フィールドとは違うからな」
正解した2人に片目を瞑ってみせた。
「ま、1回落ちてなきゃわかんなかっただろうけど。経験ってのはでかいね。
……さてと、飯が冷える前に食っちまおうぜ」
「あ、ごめんなさい。食事中に長話になっちゃったわね」
「なのはや先生達は多分アースラでの最後の食事になるだろうし」
「うん」
ふと、エイミィと目が合った。
互いににやりと笑い、やれ、と目で指示を出す。
「お別れが寂しいなら素直にそう言えば良いのになあ。
クロノ君ってば、照れ屋さん」
「な、なにをっ」
「なのはちゃん、ここにはいつでも遊びに来ていいんだからね」
「はーい、ありがとうございます」
「エイミィ、アースラは遊び場じゃないんだぞ!」
「まあまあ良いじゃない。どうせ巡航任務中は暇を持て余してるんだし」
そこへリン姉からの援護射撃。
それに続けて俺は狙いを定め、放った。
「ほう、いい事を聞いた。
ならたまにこっちに来て、久々にクロノに地獄特訓巡りでもやらせるか」
「先生!? あれはっ、あれだけは止めてくださいっ」
止めの一撃を。
どうやら幼少期にやった特訓は、軽くトラウマになっているらしい。
「大丈夫だクロノ」
「え……本当、ですか?」
「ああ、ちゃんとあの頃よりバージョンアップしてあるから」
真っ青になって行くクロノを見ながら、俺とリン姉、エイミィは笑う。
まあ冗談だったんだが……なのはとユーノの顔が微妙に引き攣っていたので、早めに冗談だと教えておこう。
俺達が海鳴へ帰る朝。
見送りに来たのはいつもの3人だった。
「それじゃ、今回は本当にありがとう」
「協力に感謝する」
そう差し出されたクロノの手を、なのはが握る。
「フェイトの処遇は決まり次第連絡する。
大丈夫さ、決して悪いようにはしない」
「うん、ありがとう」
「ユーノ君も帰りたくなったら連絡してね。ゲートを使わせてあげる」
「はい、ありがとうございます」
なのはの肩に乗った、フェレットモードのユーノが応えると、2人は俺に向き合った。
「アラン君、今回は本当にありがとう」
「ありがとうございました」
「よしてくれ。この件は終わったが、やらにゃならん事はまだ残ってる。
こっちの件は俺が協力してもらってる立場だし、ギブアンドテイクってやつさ」
「それでも、ありがとう」
深々と頭を下げたリン姉を慌てて起こす。
隣でもクロノが頭を下げていて、どうしたもんかと困った俺は、空気を変える為にぽんとクロノの頭に手を置いた。
1秒、2秒、3秒……クロノは何も言わない。
「あれ? 今日は怒らないのか?」
いつもなら子供扱いするなと言うクロノが、今回は妙に大人しい。
クロノは俺の手の下で、微かに苦笑してみせた。
「いえ、ボクもまだまだ未熟だという事がよく分かりましたから。
だからもっと成長して、子供扱いできないようにして見せます」
「そうか……じゃあその日を楽しみに待っていよう」
軽く撫でてから離す。
本当に……子供は成長が早いな。
リン姉と目を合わせて、笑った。
なんとなく、今のはアイコンタクトとかではなく通じ合えた気がしたから。
「じゃあ、そろそろいいかな?」
タイミングを計っていたエイミィに全員で返事をする。
指示に従って転送ポート上に身を寄せ合った。
「それじゃ」
「うん、またね。クロノ君、エイミィさん、リンディさん」
なのはの言葉に手を振る3人に見送られて、俺達は海鳴へと転移した。
「んー……」
着いた瞬間深呼吸をする。
隣を見るとなのはも同じ事をしており、思わず笑ってしまった。
潮の香りを胸いっぱいに吸い込むと、帰って来たと言う実感が湧く。
なのはと顔を見合わせた。
「帰ろっか、お兄ちゃん、ユーノ君」
「ああ」
「うん」
そうだ、帰ろう。
俺達の家へ。
俺となのはは小走りで家路へと着いた。
その後には特筆する事はない。
朝早く家に帰った俺達は、家族に揉みくちゃにされながら無事を喜ばれ、サボりは駄目と言う母さんの発言の下学校へ。
なのははアリサ嬢やすずかと久々に会い、今日は本当に色んな話をしたのだと帰ってから話してくれた。
「────事件の感想?」
「ああ、なのはは魔法絡みの事件、解決したのはこれが初めてだろう?」
闇の書の方はリインフォースの件が残ってるから、まだ解決とはいえない。
ずっと魔法を習っていたとは言え、関わった事件が今回初めて終わったのだ。
この事件を通してなのはが、どんな事を思ったのか、何を考えたのか、それを知りたかった。
「うん、そうだね……」
眠そうな顔をしていたなのはは、少し考え込むとゆっくり話し始めた。
「────夢中だった時の事は、過ぎ去ってしまえばなんだか一瞬の事のようで……
だけど、心の中には確かに残ってる。
出会った事、必死だった事、……色んな事」
そう、なのははこの事件の感想を締めくくった。
右手を胸に当て、目を瞑ったまま、どこか懐かしむかのように。
「……そうか」
この子は一足早く、一人立ちの準備を始めたのかもしれない。
事件前に比べ随分大人びた顔をする様になったなのはの顔を見て、そう思う。
全てを話し終えるとなのはがベッドへダイブした。
疲れているのに時間を取りすぎてしまったようだ。
どうしても聞いておきたかったのだけど、ここはもっと配慮するべきだっただろう。
「お兄ちゃん、今日はゆっくり休んでね。ユーノ君にもそう言っといて」
「ああ」
「ベオウルフも、本当にお疲れ」
その言葉にベオは声を出さず、だけど確かに輝く事で返事をした。
それっきり、倒れこんで寝息を立て始めたなのはを見て、穏やかな気持ちになり頬が緩む。
久々の家のベッドだ。
きっとよく眠れる事だろう。
風邪を引かぬよう布団をかけて、ゆっくりと頭を撫でた。
「……お疲れ、なのは」
電気を消して部屋を出る。
なのはは最後まで口には出さなかったが、やはり彼女の事が気がかりな様子だった。
やれやれ、相変わらず溜め込む子だ。
らしいっちゃ、らしいんだけどな。
溜息をつきながら、俺は通信ウィンドウを開いた。