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「……つまり、最近なのはが夜遅く出掛けてたのは、そのジュエルシードを集めてたからなのか」
「うん、黙って出かけたりしてごめんなさい、お父さん」
しょんぼりと垂れたピッグツインが今のなのはの心情を表していた。
「えっと、話をまとめると。
ユーノが発掘したそのジュエルシードって言うのがこの街に散らばって」
「それをユーノが回収しようとしたら逆に返り討ちにあい」
「魔法の才能のあったなのはに助けを求めて協力するようになったって事ね」
順にみーちゃん、恭さん、桃ちゃん。
何と言う高町家会話リレー。
思わず心の中で突っ込んでしまう。
「はい、巻き込んでしまってごめんなさい」
「まあ、済んでしまった事は仕方ない。
だがおかしいな。なのはが生まれた時に受けた検査じゃ、魔力は一般人の域を出なかったはずなんだが」
あ、これはもしかすると説明できるのは俺だけかもしれない。
シロさんの呟きに答えるべく口を開く。
「そりゃ“魔力”違いだよ、シロさん」
「魔力違い?」
「ん、俺もあっちの魔法を使うまで気付かなかったんだけどね」
少し目を落とし、右手の相棒を撫でた。
「同じように“魔力”って名づけられてるから混同されがちなんだけどさ。
あっちの魔法を使う為の“魔力”とこっちの魔法を使う為の“魔力”、これらは似て非なる力なんだ」
「え、そうなの!?」
驚きの声を上げたのはこの中で最も魔法に対する造詣が深いはずのリン姉。
「まあ、これは俺が大分変り種だから分かった事なんだけどさ。
同じように魔法を使ってもエネルギーが抜けていく所が……本当になんとなくなんだけど、違うんだよ。
現にミッドの人間が地球式魔法を使おうとしても使えないっしょ?」
「確かにそう言う実験データと報告があったな。
だからこそ地球の魔法は保護されているとも言えるが」
クロの奴本当に勤勉だな。
「俺が思うに、地球の人間は地球式魔法が使えるように進化していったミッド人なんかとは別の種族なんじゃねえかな。
魔力素がそれなりにあるこの世界ではもっとリンカーコア持ちの人間が見つかってもおかしくない。
なのにコア持ちが稀にしか見つからないのは、種族が違うからじゃないかと俺は睨んでる」
「……なるほど。証拠はないが、そう考えると辻褄が合う」
ミッド組は頷き、地球組みは話しについて来れてない。
この辺りで話を切り上げておこうと真剣な顔をした。
「と言うわけで、今のはオフレコな」
「オフレコ?」
「オフ・ザ・レコード。内緒って事」
なぜと聞かれる前に話を続ける。
「別種族って事はミッドにおいて新しい力になり得るって事でしょ。
それを研究する為に地球人を拉致するような奴等がきっと出てくる。
そうしたら地球と管理世界の対立は避けられない。
俺、戦争とか嫌いなんだよね………………めんどいし」
最後のは小声だったのだが、隣に座っていたクロには聞こえてしまったらしい。
あからさまに顔が引き攣っている。
「管理局はそんな事しないわよ!?」
「リン姉、別に俺は局に話を絞ったわけじゃないよ。
問題は外の世界から地球に対する敵が来る恐れがあるって事だ。
ほら、生命科学を研究してる次元犯罪者なんて食いつきそうなネタじゃんか」
心当たりがあったのか、彼女は黙り込んでしまった。
あーもう、俺がやったとは言え、この暗い雰囲気やだなあ。
「ま、とりあえず今のはここだけの話って事で。
で、どこまで話したっけか?」
「確か……なのはがユーノに協力し始めた所だな」
アイコンタクトで恭さんに礼を言う。
乗ってくれる人がいて助かった。
「あー、そうだった。
それで、俺達も来たし、結構危なくなりそうだから局員としては後は任せてくれって言いたいんだが……」
「私が決めた事だから最後まで遣り遂げたいの。
『困っている人がいて、助けてあげられる力が自分にあるなら、そのときは迷っちゃいけない』って、そう教えてくれたのはお父さんだよ。
私は、皆と一緒にこの街を護りたい。
それとね、今は敵対しちゃってるんだけど、悲しい目をした女の子がいるの。
あの子とお話をしてみたいんだ」
それを聞いてシロさんは少し難しい顔をする。
ま、自分の言った言葉がなのはの後押しをしてる状態だから仕方ないよな。
「なのはさんの意思は固いようですし、こちらとしましても勝手に動かれるよりは手伝っていただいた方がありがたいんです。
そこで、この事件の間、彼女を民間協力者として迎え入れたいと思いまして、ご家族にご説明に上がった次第です」
「そうですか……」
そう答えたシロさんの顔はすでに諦めが入っているように見えた。
結論は見えているが、俺達は彼の返答を待つ。
「なのは」
「はい」
「やめる気は、ないんだな?」
「うん」
決意を篭めた目でなのはが答えると、シロさんは大きく溜息をつき、
「なのはには普通の子として過ごしてもらいたいと思ってたんだがな」
「ご……ごめんなさい」
次いで苦笑した。
「まったく、その頑固な所は誰に似たんだか」
「いや、間違いなくシロさんと桃ちゃんの子だと思うよ。
自分の意思を曲げようとしない所とか、正義感の強い所とかそっくり」
「刃護……お前な」
呆れた目を向けられたので、おどけるように肩をすくめ誤魔化す。
「こちらとしては娘に危険な事はして欲しくないんですが……
こうして筋を通しに来てくれた貴方達を信用しようと思います」
真っ直ぐにリン姉の目を見て、シロさんは結論を出した。
なのはの顔がぱあっと明るくなる。
「娘を、よろしくお願いします」
「お預かりいたします」
シロさんが深々と頭を下げ、それに釣られるようにリン姉も頭を下げた。
「刃護も、なのはの事、よろしく頼むよ」
「ん、俺はお袋に会いに行くから一時的に抜けるけど、戻ってきたらきちんとサポートするから」
必ず無事に返してみせるよとこの場で声に出さず誓う。
それにシロさんは満足そうに頷いた。
「さて、と」
「今度は刃護君の番ね」
あの……桃ちゃん。
なんだかもの凄いプレッシャーを感じるんだけど。
「当然よ。五年も私達をやきもきさせたんだもの」
「俺、声に出してた?」
「いいえ。なんとなくそう思っただけよ」
にこにこと笑顔のままの桃ちゃんに戦慄する。
いや、やっぱこの人シロさんの妻なだけあるわ。
「まあ、話は割りと単純なんだよな。
五年前のあの日、俺の誕生日、俺はあるロストロギアによってミッドチルダに強制召喚させられたんだ」
「またロストロギアか。厄介だな、それは」
そう言って恭さんが深く溜息をついた。
「ま、ロストロギアってそう言うもんだからね。
まあそれが今の俺のパートナーになってるんだけど」
指輪を一撫でしてベオウルフを召喚する。
正確には召喚じゃなくて俺の魂に融け込んだベオを表に出しているだけなのだが。
突如現れた青年に高町家一同は警戒を示すが、彼が跪き臣下の礼を取った事でその目を丸くした。
「お初お目にかかる。
私は主の所有する“王の剣環”ロブトールが管制人格。
ベルカの騎士、ベオウルフ」
「ベオ、楽にしていいよ」
「はっ」
一礼してベオは俺の座るソファの後ろに控える。
「一般的なロストロギアと違ってベオウルフには主を選定する機能があってさ。
広い次元世界の中、条件に適合する主人を見つけると、自分の所に召喚して契約するか否かの選択を迫るんだ」
「なるほどな。だから突然いなくなったのか。
召喚されたのが五歳の誕生日だったのはなんでだ?」
「理由としてはリンカーコアの成熟度合が大きい。
現主の覚醒は非常に早く五歳であったが、先代は一〇歳を過ぎていたしな。
主のコアは五歳になった時、私を扱えるだけの安定性を得たのだ」
恭さんの質問に淡々と答えるベオに苦笑して話を続けた。
「困った事と言えば、こいつの態度が普段からかなり固いって事くらいかな。
俺としてはパートナーだと思ってるからもっと楽にしていいって言ってるんだけどさ」
「本契約を交わした主は私にとって絶対です」
「ってな感じなんだ、いつも」
お手上げと両手を上げてみせる。
そこでずっと考え込んでいる様子だったユーノが質問を口にした。
「ロストロギアの所持ってかなり厳格な基準があったような……」
「まあ、普通は、な。
ベオの場合本契約を交わしちまうと契約者は死ぬまで引き離せないんだ。
だから仕方のない措置なんだと。
まあそのせいで管理局に所属しないといけなくなって、なかなか帰ってこれなかったんだけど」
「クローベル統幕議長曰く、ジンゴが休暇を取らなかったせいだけどな」
余計な事を言うなとクロを睨みつける。
その言葉に反応したのはあまり話しについてこれていなかったみーちゃん。
「クローベル統幕議長?」
「ああ、今の俺の保護者になってくれてる人だ。
正確には時空管理局本局統幕議長ミゼット・クローベル。
大仰な役職名から察しはつくかもしれないけど、管理局のお偉いさんだな。
ま、見た目はどこにでもいそうなばあちゃんだけど」
「なんでまたそんなお偉いさんに……」
渋い顔を真っ先にしたのはシロさん。
まあ、シロさんはでかい組織のお偉いさんにいい思い出がないだろうしなあ。
「ベオウルフの先代契約者はばあちゃんの祖父だったんだと。
その関係でベオは彼の形見としてクローベル家に保管・封印されてたんだ。
で、向こうに飛んだ俺の第一発見者がばあちゃんで、よからぬ事を考える輩への牽制として俺を養子入りさせたってわけ」
ばあちゃん自身子供がいなかったからってのもあるんだろうけどと続けると、シロさんの顔が少しだけ緩んだ。
恩人が疑われるのは心苦しいからな。
「その……」
少し言い出しにくそうに声を出したのは桃ちゃん。
「刃護君の髪が銀色になったのは彼との契約が原因なのかしら。
ただ契約って言っても仮契約と本契約があるくらいだから、きっとマイナス作用もあるんでしょう?」
ゆるりと首を振る。
「まあ、確かにマイナスはあったけど、もうその期間は終わってるんだ。
一年間は魔力が全く使えなくって、その後徐々に使えるようになっていく。
たったそれだけの作用だったから俺としては契約したほうがプラスは大きかったかな。
……あとこの髪は親父の血の影響だよ」
「でも……式守の中でも血の濃い子は生まれながらに持つ莫大な魔力のせいで銀髪になるんでしょう?
……刃護君は、その、消える前は宗家の出なのに黒髪だったから……」
ああ、なんかもう気を使われるのも疲れてきちまった。
いいや、もうぶっちゃけてしまおう。
「だから、式守から絶縁された、か」
深く溜息をつきながら言った言葉に、一部の人間が驚きの目を向けてきた。
つまりは、俺が気にしなければ言いだけの事なんだろ。
「桃ちゃん、そこまで気を遣わなくていいよ。
俺あいつ等の事は諦めてるからさ。
それでも俺を俺として見てくれる人はいるし。
護国伯父さんとか、那津音姉さんとか」
姉さんと呼んでいるが那津音姉さんは正確には俺の従姉に当たる。
護国さんの実子で、式守宗家次期当主。
式守家において俺の事を認めてくれている数少ない一人だ。
瞬間、ぴくりとシロさん達の表情が揺れた。
なんだ……?
疑問に思いもう一度確認してみても、先程見えた動揺の色は見つからなかった。
こうも完璧に隠されてしまうと、逆に怪しく思えてくる。
しかし、追求しても彼らが答える事はないと結論付けた。
「……ベオが言うには、俺のあれは一種の防衛反応だったらしい」
「主の中には複数の異なる力が詰め込まれていた。
私と契約する事で同種の力として扱えるようになったが故、今まで堰き止められていた力が解放されたのだろう」
「同種の力として扱う?」
疑問の声を上げるのは恭さん。
確かにこの辺りは分かりづらい。
「ベオが俺に溶け込んだことで、二つの魔力を統一して同じものとして扱えるようになったんだ。
その辺りの魔力変換なんかがベオの本来の機能だったみたいでさ」
「ばらばらのままだとまずいのか?」
「うん。管理世界系の魔力と地球系の魔力。
異なる力が体内で鬩ぎあってると身体バランスが崩れるらしいんだ。
で、管理世界系の方が力が強かったから、そちらをベースに地球系の力を抑え込んでたってのが昔の俺の状態らしい。
契約してからはその必要がなくなったんで、解放された地球系魔力が身体に影響を及ぼし、結果として本来なら幼少期に出るはずだった色が今更になって出てきたってとこだ」
「……そうか」
渋面の恭さんが頷く。
納得したわけではないだろう。
あの頃の式守分家達の俺への対応を目の当たりにしてきたのだから。
ほんと、不器用だけど優しいよな、恭さんは。
少しだけ苦笑してから皆を見渡した。
「俺の方の事情はこんなもんかな。まだ何か質問ある?」