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リリカルなのは二次小説中心。 魂の唄無印話完結。現在A'sの事後処理中。 異邦人A'sまで完結しました。
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「「「「ええええええええええええええええええっ!?」」」」

 あ、やっと再起動したか。
 結構かかったな。

「なんでっ、じゃあ今まで私が隠してきたのって全部無駄だったの!?」
「ちょっと待て、ジンゴってどこの家の出なんだ!?」
「首脳会議って事は各国首脳かここの魔法使いのトップだよね。
 もしかしてジンゴってVIP?」
「頭文字がMから始まる日本のトップ……ってまさか!? ジンゴ君!!」
「は、はい!」

 大混乱の最中、リン姉が大声で俺を呼んだもんだから思わず姿勢を正して返事をしてしまう。
 両肩を掴まれ、ずずいと顔を寄せてリン姉が口を開いた。

「お母さんのお名前は?」
「み、御薙鈴莉だけど」

 その名前を聞いて、アースラ組の顔が引き攣る。

「大魔法使い御薙鈴莉の子供ですって!?
 御薙に銀髪の子がいるなんて聞いた事ないわよ」
「そりゃ、俺五歳からミッドにいたから、多分死亡扱いだし。
 大体五歳までは黒髪だったって言ったろう?」
「でも家系的には黒髪よね?」
「ん、この銀髪は多分親父方の血の影響だし……」

 言葉を濁す。
 だけど混乱中のリン姉はそんな事に構ってはくれなかった。

「お父さんは?」
「刻国[ときくに]。
 ………………………………式守、刻国」
「し……式守家……」

 端末を呼び出すと忙しくコンソールを叩き始めるクロ。
 しばらくして出たらしい結果に、更に顔を引き攣らせた。

「式守刻国、享年二一歳。……式守宗家現当主、式守護国[さねくに]の実の弟です」
「まあ、そうだな」

 尤も親父は俺が生まれる前に殉職したらしいから会った事もないが。

「なぜ黙っていたの?」
「お袋は多分俺が生きてりゃ他に文句は言わないだろうし。
 ……俺は、式守を名乗る事は許されなかったから」

 言葉に隠しきれない苦味が混ざる。

「それでも──」
「クロノ」

 更に追求しようとしたクロをリン姉が止めてくれた。
 視線で「ありがとう」と伝えると、「気にしないで」と返ってくる。

 流石は提督……か。

「……ん、俺の事情はどうでもいいんだ。今はなのは達の事、だろ?」
「そうね。
 じゃあこの後、少し遅くなるけどお邪魔させてもらって、説明する形かしら」
「ま、そんなとこじゃないかな」

 話が一段落したので、ずっと引っかかっていた事を聞いておこうと口を開いた。

「それから、一つ確認したい事があるんだけどな」
「あ、うん。何?」

 未だショックが抜けきらないなのはを置いて、ユーノが答える。

「なのは達がジュエルシードを探し始めてから結構な時間が経ってるだろ。
 その間大規模結界の展開とか、長距離砲撃とかしたみたいなんだけど、現地の魔法使いの調査チームみたいなもの海鳴で見かけた事はないか?」

 そう訊ねると、ユーノは目を瞑り考え始めた。
 と、横合いからようやく現世復帰したらしいなのはが口を出す。

「なかったと思うよ。
 魔法使いさんがいたらマジックワンドで分かるはずだもん。
 海鳴の魔法使いはかなり少ないから、新しい人が来たら気付くと思うの」

 その言葉に眉を顰めた。

「ジンゴ君? 何かおかしな点でも?」
「かなり、ね。なのはの魔力は結構大きい。
 これで思いっきり砲撃をかましたら必ず調査チームが派遣されるはずなんだ。
 なのに誰も来てないってのはどう考えても動きが遅すぎる」
「魔法使いは少ないって話だし、単純に気付いてないか、もしくは派遣が遅れてるとかじゃないのか?」
「ありえない。ここは海鳴市なんだぞ」
「それが?」

 訳が分からないと言った顔をしたクロを見て気付く。

 そうか、この辺りの地理を知らないと分からないか。
 補足説明しとこ。

「隣町は瑞穂坂だ。つまり、御薙と高峰、そして式守のテリトリー。
 日本魔法使いの名家三家が、自分のお膝元で大魔力を感知してるんだぞ。
 一家ならともかく三家全てが魔力反応の発現を無視するなんて事はありえない」
「と言うより、力のある家が固まりすぎなのは気のせいかしら」
「元々御薙と高峰は懇意だし、式守は代々あの土地を守ってきた。
 更に言えば瑞穂坂は魔法使いにとって風水的にも地脈的にも良い土地らしい」

 まあ、その辺りの話はちらっと聞いただけだからよく分からんのだけど。

「でも言われてみれば確かにおかしい。
 いつもなら地球に落ちたロストロギアの情報は管理局に届けられるはずなんだが」
「今回は次元震を計測したから来たのだし……確かに、変ね」
「とすると、ユーノが言ってた次元船の事故ってのもキナ臭いよな」
「まさか、情報が差し押さえられてる?
 だが、どこの誰がどの時点で押さえてるのかが分からなければ……」

 うーん、と考え込む俺達を呆っと見るなのは。
 ユーノは事の深刻さに気付いたのか、同じように考え始めた。

 ああ、もうわっかんねえ!

 がりがりと頭をかきむしると、お手上げとばかりに両手を上げた。

「駄目だ。情報が足らなすぎる。
 とりあえずお袋に会ったら、この手の情報が回ってきてないか聞いてみるよ」
「そうね、じゃあこの話はここまで。
 なんだか途中余計な話がたくさん入っちゃったけど、なのはさん達には協力していただけると言う事でいいのかしら?」
「あ、はい、お願いします」
「よろしくお願いします」

 頭を下げる二人に笑いかけるリン姉と、まだ微妙な顔をしているクロ。

「じゃあとりあえず協力要請をしに、なのはさんのお家に行きましょう。
 ちょっと時間が遅くなってしまったから、先にご家族に連絡を入れてもらってもいいかしら?」
「あ、じゃあお店の方に連絡します」

 と、二人の会話をよそに、なのはの家に戻ると聞いて変身魔法を使おうとしていたユーノの肩をがっしり掴んだ。

「あ、お前はそのままな。
 きっちり恭さんとシロさんに絞られておけ」

 なお、俺としては普通に笑顔で言ったつもりだったのだが、後でクロに「アレはコロス笑みだった」と感想を漏らされ、がっつりへこんだ事は余談も余談である。




 夕暮れ時、海鳴海浜公園近く。
 アースラから転移した俺は海の方を向いて両手を広げた。

「海鳴よ、私は帰ってきたーーーーーっ!!」
「いや、何をやってるんだ、君は」

 クロの呆れた声がちょっと痛い。

「あー、ちょっと地球が久々すぎてテンション上がってて。
 ほら、さっきはそんな事してる暇なかったし」
「はあ……まあ、いいが。ほどほどにな」
「あ、じゃあ私はちょっと電話してくるね」

 じゃれあう俺達をよそになのはが電話をかけに行ってしまった。

 って、公衆電話じゃねえんだ。

「携帯電話……」
「と言うらしいな。
 ここの文化レベルを考えると中々便利な部類に入る機器なんじゃないか?」
「今時は小学生でも持ってんだなあ。
 俺がいた頃は一部の大人しか持ってなかったけど」
「そうなのか?」
「ああ。技術レベルが上がって誰でも持てる様になったってとこか。
 俺が離れている間、地球もそれなりに進歩したんだなあ」

 ちょっと浦島太郎の気分だと呟くと、クロが首をひねった。

 まあ、わかんねえよな。

 苦笑しながら日本人なら誰でも知ってるような昔話の内容を説明していく。
 割りとこうした表現や言い回しなんかは日本では多いから、滞在が長くなるようなら勉強させてもいいかもしれないなどと、詮無い事を考えた。


 閑話休題


「リンディさん、お父さん達今からお店を切り上げて戻るから、先に家で待ってて欲しいそうです」

 ぱたぱたと小走りで戻ってくるなのはに合流すべく歩き出す。

「そう、ありがとう。じゃあ一足先にお邪魔する事にしましょうか」

 そうして俺達は公園を後にした。
 ゆっくりと海鳴の街を歩いて行く。
 離れていた五年間、海鳴の街は記憶にあるものと大きくではないが、確実に変わっていた。

「……五年、か」

 一言で表せてしまうその言葉が今は、重い。
 ばあちゃんは頑張ってくれたけど、今の立場ではそう無理は出来ない。
 結果として帰ってくるのにそれだけの時間がかかってしまった。

 まあ、ばあちゃん辺りに言わせりゃ俺が休暇取らなかったせいなんだけど。

 別に帰りたくなかったわけじゃない。
 むしろ周りが考えているよりもずっと、俺は帰りたかった。
 お袋は多分俺がいなくても大丈夫だけど、泣き虫の弟の事が気にかかってたから。

 だけど……

 そう、だけれども。
 クローベルの名はそんなに軽いものではないのだ。
 俺がやった事は即ばあちゃんの評価に繋がる。
 そんな環境で、自分の我侭など押し通せるはずがなかった。

 きっとそんな事気にしないでいいのにって笑うんだろうな。

 俺の保護者となってくれたお人よしの顔を思い浮かべる。
 彼女に恩をあだで返すような真似はしたくなかった。
 それでも、こうして実際に戻ってくると、五年と言う時間を実感し気が重くなる。

「ジンゴ君?」
「あ……どうかしたか、なのは」
「ううん。なんか寂しそうだったから」

 心配そうに俺を見る彼女に苦笑した。
 どうやら気を遣わせてしまったらしい。

「いや、流石に俺が覚えてる街並とは大分変わっちゃってたからさ。
 随分長く離れてたんだなって」
「そっかあ」

 軽く誤魔化すように、左手に見える住宅を指差した。

「そ。あっこの角にあった公園も潰れちまったんだな」
「え? 公園なんてあったっけ?」
「空き地に砂場とベンチしかないような本当に小さな公園だった。
 ……ああ、思い出した!」

 当時の記憶をさらって、結構大事な事を思い出す。

「にゃ!? な、何を?」
「うん、そうだった。
 ここに昔あった公園で、初めてなのはと会ったんだ」
「ふえ……そうなの?」

 あれはシロさんが入院してお袋と一緒にお見舞いに行った時だった。
 桃ちゃんが年の近いなのはを紹介してくれようとしたら、家にいるはずのなのはがいなくて、

「全員で探し回ってさ。俺があの公園で見つけたんだ」
「そうなんだ」
「そうそう。泣きそうな顔でしがみついてきてな。
 結局桃ちゃんが来るまで離れなかったんだぞ、お前」

 くつくつと意地悪く顔を歪めて笑うとなのはは頬を赤く染めた。

「そ、それにしても記憶力いいね」

 そのあからさまな話題転換に内心で苦笑する。

 こりゃ乗ってやるべきだな。

「そうか?」
「そうだよ。だって私全然覚えてないもん」
「まあ、なのははまだちっさかったからな」
「ジンゴ君も大して変わらないと思うけど……」
「小さい時の一年間ってのは結構でかいんだぞ」
「それでも、ジンゴ君記憶力良すぎなの」
「あー、なんて言ったらいいのかなあ?」

 小さい頃のエピソードを事細かに覚えているのには、それなりに理由がある。
 ただ言っても絶対に信じてもらえないので誰にも話した事はないのだ。

「まあ、ちょっと記憶力には自信があるんだ」

 結局苦笑して誤魔化した。
 なのはは腑に落ちないような顔をしていたが、ふうんと納得し追及してこない。
 あの頃からそんな傾向はあったが、中々気遣いしいの子に育ったらしい。

「っと、着いたよ」
「ここ?」
「うん、ここ」
「あー、そうだそうだ。あの道場見覚えあるもんなあ」

 翠屋は頻繁に行ってても、家の方はあんま来た事なかったからなあ。
 シロさん達との手合わせも主に山ん中でやってたし。

 目の前には一般家庭と言うには少し大きめの家と、それに付随する道場。
 まあ、道場がある時点で一般家庭とは一線を画している気もするが。
 何よりここに住むのはお袋曰く、戦闘民族高町家の人々。
 じわりと手に汗がにじむ。

「ただいまー」

 そんな俺の心中など知る由もなく、なのははさっさと家に入ってしまう。
 仕方なく、俺はなぜか脳内に流れてきたドナドナをBGMに高町家の門をくぐった。
 

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ヘタレ物書き兼元ニート。
仕事の合間にぼちぼち書いてます。

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