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俺の事、なのはの事、魔法の事、今起こっている事。
そこまで話したら丁度食い終わったので食後のお茶で一服。
さて、ここからが本題だ。
「それでな、今日張った封時結界っていうのは、基本的にリンカーコアのない人間を結界外に弾き出す性質を持たせてあるんだ」
「ん……兄ちゃんがわざわざそないな話をするっちゅう事は、私にもあるんやね、そのリンカーコアが」
「ああ、ついでに言うとな、はやて。
お前はすでにデバイスを持ってるんだ」
「はあ!? って言う事はなんや、私知らんうちに魔法使いになっとったん?」
「まあ……そうなるな。マイナス方面に、だが」
「マイナス方面?」
「まずはそのデバイスの話からしようか」
これは1つの、悲しい過去をもった魔導書の話だ、と前置いて話し始める。
言ってから柄じゃないな、と苦笑。
「はやての部屋に変な本があるだろう。あれがデバイスだ。
ベルカの至宝、夜天の魔導書」
「ああ、前に兄ちゃんがぼけっと見とった」
「おう、それだ。
そしてあれは今、こんな風に呼称がついてしまっている。闇の書、と」
なのはを除く家族全員が一様に暗い顔を見せる。
この反応はある意味仕方ないとも言える。
皆俺とあれの因縁を知ってるのだから。
そんな皆の様子を横目に説明を続ける。
書のデバイスとしての特性、後付された守護騎士達、そして夜天がある存在によって闇へと歪められてしまった事。
「なあ」
「ん、なんだ?」
「なんで兄ちゃんはそんなに闇の……ううん、夜天の事に詳しいん?」
その質問に一同が凍りつく。
まったく、俺はもう欠片も気にしてないってのによ。
恨んだ事がなかったといえば嘘になるが、その恨みをぶつけるべきは別にあると思っている。
それ以上に11年前の事件を無事に収めた人達を侮辱したくはない。
「先代の主の時の事件で管理局員だった親父が殉職してな。
一度もののついでに軽くだが調べた事があるんだ」
「あ……」
やっちまったって顔のはやての頭をくしゃりと撫でる。
このお人よしどもめ、と心の中で毒づくと自然笑みがこぼれた。
「なんか勘違いしてないか」
「勘違い?」
「親父の死は親父が貫き通すと決めた意志の結果だ。
親父の誇りによるものだ。夜天は関係ない」
「せやけどっ、兄ちゃんの家族を夜天が奪ったんは──」
「それだ」
「え……」
「それが勘違いだ。やったのは夜天じゃない。
暴走するよう改悪されたプログラムだろ?」
「でも……それで兄ちゃんはええん?」
「俺は奪われたわけじゃない。
ただ、親父は自分の信念をもって、他を生かす為にあれを止めた。
止める事の出来る男だった、それだけの事だ。
……日本刀で人を切れば、悪いのは刀じゃなくてその使用者だろ?
暴走に巻き込まれた主も、意図せず暴走するよう仕組まれた夜天も、俺の親父と同じ被害者には違いない」
だから、悪いのは奴等だ。
それだけで、いい。
「罪は夜天にではなく、そんな風に改造した奴等にある。違うか?
……ああ、ったく泣くなよ、こんな事で」
はやてとなのはの目に浮かぶ水滴を親指で拭い取る。
感受性が豊か過ぎるぞ、お前等。
「そんな事より問題ははやての事だ」
「私?」
「そう、今どう言う風になってるかって言うとな、腹を減らした夜天がはやてのリンカーコアに侵食して魔力を奪ってんだ。
リンカーコアへの侵食の結果として神経が圧迫されてる。そのせいで足とかが麻痺してるんだ。
ああ、なるべくなら夜天を恨んでやるなよ。
どうもそいつも侵食をなんとか止めようとしている節がある。
じゃなきゃもっと早く侵食が進むはずだからな。
そいつもこの状況は不本意らしい」
「恨まんよ。この子の主今は私、なら面倒見るんも私の役目や。
でも兄ちゃんそれほんまなん?」
「あ? なんに対しての本当だ、今のは?」
「私の足……」
「ああ、ここんとこ少し調子が良いのはさ、時たま俺がマッサージしてるだろ」
「うん。その後しばらくは調子ええんやけど……」
「その時一緒にリンカーコアの治療を簡易なもんしか出来んが一応施しててな。
まあ対症療法でしかなかったんだが、ようやく治せる可能性が見えてきた所だ」
「ほんまっ!?」
「それ本当っお兄ちゃん!?」
「お、おう。実際闇の書が夜天の書に戻れば侵食はなくなるはずだ。
あれも夜天が押し付けられた歪みの1つだからな」
2人の勢いに押され少々たじろぐ。
視線を2人からずらして姿勢を正す。
「ユー坊、第1級捜索指定ロストロギア“闇の書”を、ベルカの至宝である“夜天の魔導書”に戻せるとすれば、スクライアはどう動く?」
「へっ、あ、えっ、ちょ、ちょっと待って下さい」
闇の書の話が出た時から黙りこくっていたユー坊に振る。
これはかなり重要な問いだ。
ユー坊も即答はできないらしく、逡巡しながら、言葉を選んで喋りだす。
「そう……ですね。
第1級クラスのロストロギアが使用可能になるというなら、ロストロギアの研究も進みますし……スクライアとしては協力は惜しまない、と思います」
「そうか……」
茶を飲んで喉を潤す。
少し、緊張していたらしい。
「俺はな、はやての部屋であれを見てからずっと考えていた。
どうするのが最善なのかを」
見渡す。
全員が固唾を呑んで俺を見つめている。
ここに居る人達を、大事な人達の日常を俺は護りたい。
「足りない情報もあったけど、暴走プログラムの切り離しと管制人格の再構築、その方法までは目処が立ってたんだ。
まあはやてと守護騎士達が手伝ってくれるのが前提だが」
「当たり前やんか。自分の事は自分でやらな。むしろ手伝うんは兄ちゃんの方やろ」
「そうか……そうだったな。
それでその方法なんだが、どんなに考えても管制人格へのアクセスにゃ400ページ以上の蒐集を行うって条件が外せなかった」
「え、でもそれじゃあ管理局が……」
美由希の呟きに頷く。
「ああ。
多くの魔導師や生物に迷惑をかける蒐集は犯罪行為、管理局は恐らく許可しない。
で、だ。話は変わるんだが俺は最近自分が封印したジュエルシードを解析しててな」
「ええっ、何やってるんですかアランさん。危ないですよ!」
ユー坊が大げさに驚いてる。
まあ、普通そうだよな。
そう言う反応が普通だ。
へーそうなんだとか暢気なこと言ってるうちの妹がおかしいんだよな。
「まあ、結果として大丈夫だったから良いだろう?
一応ドラッケンの中に入れたまま解析したしな。
その解析が昼に試合観戦してる時完了した」
≪解析は得意中の得意です≫
コア2つ乗ってるからな。
そこいらのものとは演算能力が違う。
ウィンドウを開いて解析結果を表示する。
はやては中空にいきなり現れたウィンドウを物珍しげに観察している。
「注目したのはジュエルシードの願望器としての機構と保有魔力量」
続いて夜天の書修復計画を別ウィンドウで表示。
「ユー坊、いや、ユーノ・スクライア。
管制人格を叩き起こしてアクセスするのに1個、暴走機構を切り離し暴走せんよう封印するのに1個、書を元の形に書き換えるのに1個、合計3つのジュエルシードを俺に譲ってもらえないだろうか?」
ただまっすぐにかの男、ユーノ・スクライアを見つめる。
幼い頃に面倒を見た小さなユー坊ではなく、スクライア一族の1人の男、ユーノとして扱う。
彼はしばらく目を瞑って考え込み、それから顔を上げる。
合わせた目は真摯だが、確かに楽しげに笑っているのが俺には見て取れた。
「……1つだけ、聞かせてください。
この過程、低く見積もっても2番目、暴走機構に関する所にはかなりの危険が付きまといます。
なんでアランさんはそこまでしてこの計画を実行しようと思ったんですか」
だからその質問に思わず笑ってしまう。
なんだよ、こいつ譲る気満々じゃねえか。
「兄貴が妹を助けようとすんのに理由を必要とすんのか?」
「いえ、要りませんよね」
そうしてユーノが肩をすくめる。
もはや笑っているのを隠す気もないらしい。
「そういえば言い忘れてた事があるんですけど……」
何もなかったように話を続けるユーノに、俺以外の面子が疑問の目を向ける。
「航行中の艦からジュエルシードが次元空間に落ちてこの世界に流れ着いたのは以前お話したと思いますが、次元空間内でジュエルシード同士が衝突して次元震が起こった事があったようで」
多分これは事実。
次元震は管理局で観測されているはずだ。
「その時一瞬ですが、空間に虚数空間らしき穴が開いたのが確認されているんですよ」
「確か……魔法が使えない空間、だっけ」
「ええ、いくつかジュエルシードがそこに落ちちゃって。
いやあ、困りました。虚数空間に落ちたんじゃトレースできないし、この世界まで来れたのはどうやら18個だけみたいなんですよ」
そうしてユーノは唖然としている全員を見渡し、それから俺を見てにやりと不敵に笑った。
ああもう、お前本当に9歳かよ。
かっけえじゃねえかこのっ、女顔の癖してよお。
ユーノと目を合わせ、笑う。
OKユーノ、乗ってくれてありがとな。
「いえいえ、アランさんを参考にさせていただきました」
「俺はそこまで悪役みたいな笑い方はしないぞ」
≪自覚なかったんですか、キング≫
「うえっ、なんか最近お前俺に対して棘がないか?」
シリアスな雰囲気から一転、ドラッケンが緩い空気を作り出す。
これからの事を考えて少し緊張していた俺を心配しての事だろう。
押さえる所は押さえている、本当俺にはもったいない相棒だ。
「えっと……ようわからんけど、そのジュエルシードで私の足は治るん?」
「ああ、治す。治してみせるさ」
「いつ!? いつ治るん!!」
はやてが興奮して机の上に乗り出してくる。
おお、さすが車椅子ユーザー。
腕だけで体を支えるとはパワフルだな。
っと、はやて、近い、近い。
指摘してやると若干顔を赤くして、はやてはすとんと椅子に座りなおした。
「夜天から闇にされた時の改悪箇所は殆ど分かってるからな。
管制人格を叩き起こしてから暴走を抑え込んで、その間に俺が再構築する。
多分最初に書を起動した時に守護騎士が出てくるから、そいつ等を制すのは主の役目だ」
「うん。ほんで、いつ実行するん?」
「ちょいと纏まった時間がほしいな。父さん、来週末って予定あったっけ?」
連休を選ぶのははやての体調を整えたり、心構えを作ったりする期間が必要な事に加え、何にも煩わされずに時間を取れるのが大きい。
「確かアリサちゃんやすずかちゃん達と温泉に2泊する予定だな。
それ以外は入ってなかったと思うが」
「なら俺は来週末までに仕事を全部処理して、計画を詰めておく。
それが済むまではやての方に構えないから、その間はなのはが魔法に関わる心構えなんかを教えてやれ。俺も手が空いたらそっち手伝うから」
「うん!」
「はやての事前勉強も含めると、時間が微妙か。
ちょいと学校休むのが多くなるが、構わないよな、母さん?」
「ええ、それではやてちゃんが元気になるならもちろんOKよ」
「あ……せやけど、私のためだけにそんなにしてもらうんは……」
「はやて」
正直ここまでこの件が長引いてしまったのは取れる手段がなかったからだ。
はやてに魔法の事を話していいのか、という俺の迷いもあった。
だが、書が手元にある以上早かれ遅かれはやては魔法に関わるだろう。
それが遅いほどに今の状態は続いていき、一応の平穏に暮らせる期間は長引く。
だけど、治せるならさっさと治してしまって、はやてにもっと広い世界を俺は見てもらいたい。
「可愛い妹分と学校、どう考えても取るのはお前だろ」
「あう……可愛いて……」
「……反応するのはそこなのか。まあいい。
それにな、これは俺の我侭だ」
「兄ちゃんの?」
意外そうに俺を見るはやて。
きょとんとしている顔はやっぱり小動物くさい。
犬……じゃないな、猫でもないし……言うなれば子狸か。
うん、はやては子狸で決定。
「はやてが笑ってる方が俺は嬉しい。ただ、それだけの事だ」
さっきのユーノを真似てにっと笑う。
その隣にいるなのはが私は可愛い? と聞いてきているのはスルーする事に。
自発的に言うのは構わんが、聞かれて答えるのは妙に照れくさいのだ。
「あ……はは、はははっ」
そうだ、笑ってろ。
俺がそんな世界にしてやるから。
「はははっ、兄ちゃん!」
「なんだ?」
「よろしくお願いします!」
「任せろ」
そうして泣き笑いのはやてを囲んで皆で笑う。
って父さん、宴会だとか言いながら酒出してくるなよ。
一応合法で飲める人間は2人しか居ないんだぞ。
「あはは、はやてちゃんお泊り決定、だね」
「あー、みたいですね」
美由希も、はやても、恭也も嬉しそうに苦笑してる。
なのはは俺の袖を引っ張りながらも笑い、ユーノはそのなのはを見ながら笑ってる。
皆、皆、笑ってた。
そうだ、俺はこれを見ていたいからこんな事を始めたんだ。
なら、いつでも見れるように最大限足掻いてやる。
≪それでこそ、私のマスターです≫
ドラッケン。
お前あの渾名以外で初めて俺をマスターって呼んだんじゃないか?
≪気のせいですよ、マイキング≫
まあいい。俺とお前で出来ない事なんてない、そうだろう?
≪ja! of course, my king≫
────────interlude
今日はめっちゃ驚く事がたくさんあった。
あんまりめまぐるしいんで、これが全部一日にあった事やなんて驚いてしまうわ。
初めて友達とサッカーの応援に行って、帰りに魔法の事件に巻き込まれた。
それだけでもびっくりなんに、なのはちゃんも兄ちゃんも今日初めて会ったユーノ君も魔法使いやった。
あ、魔導師言うとったな、兄ちゃんは。
それから私の足が悪い原因が分かって、治してくれるて兄ちゃんが言うてくれた。
そいで兄ちゃんが私の事を可愛いて……
「あう」
あかん、めっちゃ恥ずかしいねんけど。
あ、けど妹言うてたもんな、妹。
「妹、かあ……」
兄ちゃんも本来ならもうすぐ20歳やって話やし、仕方ないんかもなあ。
あ、けど大分体に引っ張られとるとも言っとったな。
ならチャンスは……って何考えとるん、私。
変な方向に向かいそうな思考を頭を振って消す。
大分見慣れたなのはちゃんの部屋の天井を見ながら、どうにかして落ち着こうと試みる。
「ん……」
あ、起こしてしもたか?
ベッドに目をやるとなのはちゃんが静かに寝息を立てとった。
ほ、大丈夫そうやな。
顔を戻し天井を眺めながら、今までの事を振り返る。
私にとって兄ちゃんはどんな人なんやろか?
最初は、ただのお節介なお人よしやった。
スーパーの棚の商品を取ってもろたんが最初の出会い。
せやけど普通はそのまま夕食に誘わへんよなあ。
ほんまおもろい人や。
くすくすと忍び笑いを落としてから、ふと気づく。
両親がおらんくて独りやった私に、友達が出来たんは兄ちゃんのおかげやし、今もあんま寂しないんも兄ちゃんのおかげや。
ああ、せやな。
今日の兄ちゃんの悪戯っ子の様な顔を思い出すと、それがすとんと胸に落ちた。
「──魔法使い、なんや」
私、八神はやてにとって、兄ちゃん、アラン・F・高町は魔法使いや。
────────interlude out
カチャリと工具を置き、ドラッケンとベオウルフのメンテナンスを終える。
思っていたよりも消耗が激しい。
今はまだジュエルシード集めもそう大変じゃないから平気だが、
「足りるか、これで?」
≪微妙なラインですね。キングの努力次第、といった所でしょうか≫
手元に残ったカートリッジを数えると、ドラッケンの内部、右に10発とおまけが1発、左に10発で合計21発。予備のものが13発。
一応この5年間で少しずつ作っては足してきたが、
≪そもそもキングが鍛錬と称してぽんぽん使っていたのが原因ですが。
そのカートリッジ浪費癖をどうにかするべきだと私は思います≫
「うるせ。大魔力に耐える訓練は大事なんだよ。
ここ一番でやらかすよりゃずっとましだろうが」
≪まあ一応体の事も考えているようなので、あまり文句は言いませんが≫
「言ってるじゃん」
どうもこいつはこっちに来てから小言が増えていかん。
お前は俺の母親かってんだ。
「それにしても、こういう効果があるとはな」
≪はい、これなら体への負担も少ない。
本来の使い方とは恐らく異なりますが、より安全にカートリッジシステムを運用する事が可能です≫
ウィンドウに映るのは俺自身のリンカーコアデータ。
以前ドラッケンが言っていた不可解なコアの肥大に関する結果が出たからだ。
もっとも原因は未だ不明のままだが。
チェックしているのは通常時と魔法行使時、そしてカートリッジ使用時のデータ。
どうやらコアがでかくなった影響はプラスへ働いたようで一安心だ。
魔法行使時までは以前と特に変わりはない。
しかし、カートリッジ使用時のコア負担が格段に低くなっていた。
「単純な魔力値ではなく、俺の許容出来る魔力量が増えたのか」
≪ええ、魔力容量とでも呼べばいいのでしょうか。
それにしても、………………はあ≫
溜息をつくデバイスって妙に器用すぎると思うのは俺だけか?
「んだよ?」
≪いえ、これでまたキングが無茶をする要因が増えてしまった、と≫
いやな、心配してくれてるのは分かってるって。
「そうそう無理はしないって」
≪……≫
「いや、だからなんなんだよ?」
≪いえ、キングが言うとまったく説得力がありません≫
こいつに実態があったら恐らくジト目で睨まれていたに違いない。
いくらAIが育ったとはいえ人間臭すぎだろう。
「アー、そんなコトないヨ?」
≪普段と口調が違う上に語尾がおかしいですよ。まあ、わかってますが。
どうせなのはさんたちに何かあれば無理と分かっていてもやるんでしょう?≫
「いやな、ドラッケン。無理は──」
≪義務感でするもの、無茶は楽しんでするもの、でしょう。
もう耳にタコが出来ましたよ≫
「お前耳なんてないだろ」
≪言葉の綾です≫
処理能力高いからって無駄な方向にばっかり能力伸ばしやがって。
こんな風に育てた覚えはないんだが……やっぱり俺が原因なんだろうなあ。
溜息をつきながらドラッケンを定位置に置くと、ベッドに身を投げる。
「せっかく手に入れた平穏だ。自分から壊す真似はしないさ」
≪そう願います、トラブルマスター≫
ぐ……とうとう厭味まで搭載したか、このポンコツ高性能デバイスめ。
…………矛盾してる気もしないでもないな。
「俺は寝る。明日からまた忙しいしな」
≪まあ構いませんが。それでは、おやすみなさい、マイキング≫
「ああ、おやすみ、ドラッケン」
スタンドの電気を落とし、目を閉じる。
思っていたより疲労が溜まっていたのか、意識はすぐ闇に落ちた。