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リリカルなのは二次小説中心。 魂の唄無印話完結。現在A'sの事後処理中。 異邦人A'sまで完結しました。
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 俄かに上空が慌しくなってきたのを感じ取って顔を上げる。
 なのは達が戦っている場所まであとわずかだと密かに安堵し、

「────────は?」

 固まった。
 遠くから聞こえてくる話によると銀髪の女性は闇の書の管制人格のようだ。
 顔に奔っていた赤いライン、あれは融合事故の証なので彼女もベオと似たような存在なのだろう。
 それはいい。
 それはいいのだが、何度目を擦っても目の前の光景は変化してくれない。

「…………はは、マジかよ……」

 思わず渇ききった笑いが漏れてしまう。
 否、俺でなくても同じような反応をするだろう。
 何せ目の前で行使されようとしている魔法は見覚えのありすぎるもので、

「星よ集え。全てを撃ち抜く光となれ」

 その詠唱で確定した。
 忌々しく思いながら上空の銀を睨みつけ、すぐに対処法を考え始める。

 スターライトブレイカー+広域型+俺の体調最悪、飛行スピードは最低速。
 ……終わった、短い人生だったな。

 すぐさま不可能の文字をはじき出した俺はぐったりと脱力する。
 本当に忌々しい事に、周囲から魔力を集束させていく様でさえ本家と瓜二つだった。
 蒐集された魔法って本家と魔力光まで同じになるんだなあと軽く現実逃避してみる。

≪おい、ジン。諦めるのはまだ早えみたいだぞ≫
「え?」

 白銀に言われるまま顔を上げると、上空には迂回しながら高速で飛んでくる四人。
 ユーノとアルフは少々遠いが、なのはとフェイトは上手い事俺の上を通るようだ。

「でかした、白銀!」

 嬉々として空に上がりながら、二人に念話を送る。

【なのは、フェイト!】
【ジンゴ!?】
【ふえ、ジンゴ君!?】
【今お前等の前方五〇〇m位の所にいるんだ。悪いんだけど拾ってってくんないか?】
【わかった。場所は?】
【もうちょっとで目視できるはず……見えた!】

 建物の角で曲がってきたフェイトとなのはが姿を現す。
 俺を見て二人は頷き合い、フェイトが抱えていたなのはを離した。
 そのままの勢いでフェイトが空中に浮かぶ俺をキャッチする。

 ……そうか、なのはは高速飛行できないから。

 若干フェイトに遅れて飛ぶなのはを見て、なぜフェイトが彼女を抱えていたのかを悟る。

 しくったな。
 って事は退避スピードが落ちたって事か。

 本格的に足手纏いになってしまったと顔には出さずに嘆息する。
 実際に表に出さないのは、それをするとなのは達が気にするからだ。
 それは本意じゃない。

「ジンゴ、大丈夫?」
「ああ、ありがとな、二人共」

 フェイトの気遣いが心に痛かった。
 俺を抱えた彼女は更に迂回の度合いを高める。
 その彼女の行動に、遅れ始めたなのはが慌てて声をかけた。

「ちょっ、フェイトちゃん! こんなに離れなくても」
「あー……どうするよ、フェイト。
 あいつ自分の魔法の威力、把握してないみたいだぜ」
「……なのはだから」

 あ、そう言う認識なんだ。納得。

 抱えられているせいか、フェイトの溜息がやけに大きく聞こえる。
 実際一度アレの直撃を喰らった事がある身としては、色々と思う所が多いのだろう。
 埒が明かないとばかりにフェイトが声を張り上げた。

「至近で喰らったら防御の上からでも墜とされる! 回避距離を取らなきゃ」

 その言葉でどれだけ伝えられたのかは分からないが、なのはは彼女の言葉を咀嚼してから頷き飛行スピードを上げる。
 大げさなほど迂回して飛んでいる最中、フェイトの手に収まっていたバルディッシュのコアが一回点灯した。

 なんだ?

 訝しげにバルディッシュを見ると、どうやらフェイトも同様に感じたらしく自らの愛杖を見ている。
 そんな中、こんな状況においても落ち着いたバルディッシュの声が響いた。

≪sir, there are noncombatants on the left at three hundred yards≫
「はあっ!?」

 なんで結界内に一般市民が!?

 驚くままに顔を見合わせる俺達に、もう大分話されてしまったなのはが念話を送ってきた。

【二人共、どうしたの?】
【なのは、大変だよ!】
【逃げるのはやめだ。左方向三〇〇ヤードに一般市民が紛れ込んでる】
【なんで!?】
【知るかよ。まあ偶然結界に巻き込まれたか、はたまたコア持ちか。
 そいつは分からんが、この状況だ。やる事ぁ決まってる】
【その人の保護、だね】
【ん、ご名答】

 すでにフェイトは左方向へ進路を取り、遅れてなのはもついてきている。
 この中で一番防御力が高いのはなのはだ。
 故に俺達はなのはのシールドやプロテクションを元に防ぐ方法を考えなければならないが、

「相手がスターライトブレイカーだしなあ」
「ん? 何か言った、ジンゴ」
「んにゃ、なんでもない。そろそろじゃないか?」
≪distance, seventy, sixty, fifty ...≫

 バルディッシュがカウントしてくれてて助かったな、こりゃ。

「フェイト、離してくれ」
「え、でも……」
「大丈夫だ。なのはもすぐそこまで来てるしな」
「……分かった」

 腹に回っていたフェイトの腕が離れると同時に俺は重力に引き戻される。
 落下しながらも目算でどの辺りに降り立つかを見極め、足元に魔力を纏わせ、着地。
 勢いを殺せずに地面を滑ってしまったが、今の所魔力が俺の身体を保護してくれているので問題はない。
 むしろ問題は、

「げほっ、ごほっ、やべ……すっげえ砂埃」

 なんで街中でこんなに砂埃が立つのかと言う位に砂が舞い、むせ返る。
 タッと軽い足音と共になのはが隣に降り立ち、

「大丈夫、ジンゴ君?」
「げほっ……煙自体は、ごほっ、そうでも、ないんだが……ごふっ」
「ジンゴ君!?」

 ああ、やっぱり。
 あんまむせるもんだから傷口開いちまったじゃんか。

 泣きそうな顔で俺を揺すろうとするなのはを手で制す。
 今揺すられるとPT事件の時のようにとどめになりかねない。

「ん……ぺっ。はあ、大丈夫だ。最初に開いた傷が、少し開きかけただけだから」
「でもっ」
「平気だって。さて、噂の一般市民はどこにいんのかなっと」
「あ……!」

 きょろきょろしていた俺よりも先になのはが見つけたらしい。
 彼女が見ている方向を俺も向き、眉を寄せる。

 あんだあ?
 滅茶苦茶嫌な予感がしやがる。

 別に何があったわけではない。
 ただ、小走りに角のビルを曲がって出てきた二つの影の動きに見覚えがあったような気がしただけだ。
 とは言えこの状況では声をかけないわけにもいかない。

「そこにいる二人組み!」
「あの、すみません! 危ないですから、そこでじっとしててください!」

 俺達の声に反応して影が立ち止まる。
 それで更に嫌な予感が膨れ上がった。

 おいおい、今のはどう見ても指示に従ったんじゃなくて……

 そう、なのはの指示に従ったわけではなく、二人は明らかに何かに反応して足を止めたのだ。
 少なくとも俺にはそう見えた。

「え?」
「今の声って……」

 うわ、最悪。
 なんでこんなタイミングで。

 意地の悪い神様とやらに唾を吐きかけた上で殴り飛ばしたいと思ってしまっても仕方のない事だろう。
 何せ、

「なの、は? ジンゴも……」
「フェイトちゃん……」

 煙の晴れた先にいるのは俺達がよく知っている人物で。
 金髪と紫がかった黒髪のコンビなんて、この街じゃこいつ等くらいだ。
 唖然とする俺達を引き戻したのは、静かに響くたったの一言だった。

「スターライト……ブレイカー」
「まずっ、発射しやがった!?」

 閃光が地に突き刺さり、爆発的に街が桜色に飲み込まれていく。
 それはまさしく、星を砕くと言う名の魔法に相応しいほどの暴力だった。
 

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